○未だにどっちが正しいのか分らない
昨日NHKのラジオを聞いていたら、ことばおじさんこと梅津アナウンサーが乗りのいい三味線のテーマ音楽にのって登場し、薀蓄含蓄のある話をしていました。ことばおじさんの話には関心がありいつも感心しながら聞くのですが、ラジオゆえに分らないことが沢山あり、カーラジオなのでメモすることも出来ず、ついには「どっちだったかな?」とかえって疑問を広げることが多くなっています。特に外来語のようなカタカナ言葉は、私にとって自信が持てず使っているだけに、恥をかきそうなので小声でしか話せないのです。
私は木のカバン、通称木になるカバンを持ち歩いていますが、これがアタッシュケースだとばかり思っていました。ところが正式にはアタッシュケースではなくアタッシェケースだったのだそうです。パソコンで文字にすると間違ってアタッシュケースと入力してもこれがカタカナ言葉で出てくるし、アタッシェケースでも出てくるのですから余計こんがらがってしまいます。まあアタッシェケースのことですので、ケースバイケースとゆきたい所ですが洒落にもならない間違いに気付かず、今日まで使っていたのですから赤面の至りもんたりです。
コミュニケーションという言葉もコミニュケーションとよく間違って使う人がいます。こちらはパソコン入力すると「コミュニケーション」はきっちり変換しますが、コミニュケーションは込みニュケーションと変に変換されますが、普通の発音は後者を使う人も結構多いのではないでしょうか。
私はかつて小さな町の役場に勤めていました。その当時の役場は長閑なもので、パソコンもなく流行りだした「コミュニティ」、「アメニティ」などの横文字は机の引き出しにしまっている外来語辞典などで調べて対応すればそれなりに用が済んだものでした。ところが企画調整室でまちづくりの仕事をするようになると、議会対応とでもいうべき質問に対する町長の答弁書書かなければならず、議員さんが訳も分らず連発する横文字に苦笑しながらやんわり皮肉って正しい言葉の使い方や意味を投げかけたものでした。
特に今も忘れられない面白かった出来事が思い出されます。ある議員が町長のシンポジウムの予算説明を聞いて手を挙げて質問しました。「町長質問」、議長の許しを得て質問に立ったその議員は「シンポジウム」と言わなければならないのに「インポジューム」と発言したのです。すると神聖な議場のあちらこちらでクスクス笑いが起こりました。するとその議員は「私がインポジュームの予算について質問しているのに笑うとはけしからん」とやり返しました。町長は開いた口を塞ぐように「シンポジウムは町を興すためにやりますが、インポジュームでは町は起きません」とやり返しました。その議員さんの横に座った同僚議員が間違って使った議員の裾を引っ張り、小声で「インポとシンポは違うぞ」と諭しその議員は間違いに気付き、議長の了解を得て失言取り消しと相成りました。めでたしめでたしです。
シミュレーションとシュミレーション、これもパソコンではどちらもカタカナで変換されて出てきます。普通は後者のシュミレーションと発言する人が多いようですがさて「あなたはどちらが正しいと思うでしょう」なんて質問をすると、「えっ、どっちだっけ?」となるのです。
今はあの分厚い広辞苑やイミダスも本棚の隅に追いやられ、ノジが抜くほど使うことが少なくなりました。もっぱらパソコン辞書で索引するのですが、それにしても言葉の乱れは目を覆うばかりです。私のような古い人間は若者たちが使っている日常語だってすっかり理解できず、コミュニケーションが取れなくなってしまいました。「ナタデココ」という食べ物を、「ナタデココどこを切るのと父が言い」と言ったという川柳はもう遠い昔の川柳になって、「ドットコム」も「ドットコムどこが混むのと父が言い」になってしまいました。私は古い人間の組内になってしまいました。
「分らずも 分ったような 顔をして 平気で使い 赤恥かいて」
「この言葉 格好いいから 使ったが 説明しろと 言われてアウト」
「もう古い 私は古い 組内だ 若者言葉 まるで外国」
「武士言葉 流行る世の中 分らない お主中々 やるではないか」