○知らないのに知ったふりをする人
まるで落語の話のようですが、世の中には知らないのに知ったふりをする人、知ってるのに知らないふりをする人、知らないのに知らないふりをする人の三種類の人間がいるようです。すらないのに知らないふりをするのは愚の骨頂で、知らないのなら知らないといえばいいのでしょうが、そうも行かないのが人間の悲しいところのようです。大体今の世の中は余程利口に生まれてきても時代の進歩が早く、知るための努力を幾らしても追いつかないくらい知らないことが増え続けているのです。最近は知らなくてもパソコン辞書の普及でかなり調べることが出来るのですからアリがたことですが、そのパソコン辞書の引き方が分らないようだと、門前払いされるのです。
知っているのに知らないふりをする人にも困ったものです。特に国会中継などで証人喚問と称して登場する人たちの中には、この手の人が多く「記憶にありません」とか「忘れました」などと曖昧模糊な答弁を繰り返し、後に偽証罪という追い討ちをかけられたりするのです。最も最近は国会中継もカメラが入るようになって、極限の世界が国民の前に晒されるのですから、その場だけでも逃れたいという人間の心理も分るような気もするのです。
最近有名料理店や菓子店老舗、ミート業者の食に関する不正が相次いで発覚し、それらが誘導するのか車のリコールなど早めの対応が目立つようにはなってきましたが、その度に責任者の面々が頭を下げて詫びを入れる姿がテレビで紹介されるようになりました。頭のてっ辺が薄くなった人たちの苦痛にゆがんだように見せる姿の裏に、ペロリと舌を出して薄ら笑いさえする姿が見え隠れするようです。上に立つものが「知らなかった」「忘れました」「記憶にありません」「指示したことはありません」などと言い逃れするのはみっともない話です。どんな些細なことでもトップに立てば全て責任は被らなければならないし、責任を取らなければならないのです。
ところで知らないのに知ったふりをする人もかなり多いようです。まあ人間は自分をより以上に見せたいと思う見栄のようなものがあるのですから当然といえば当然です。私が直接体験した話です。これも落伍のネタ話に使いたいと思っていますが、ある町の議会での話です。ある議員が「町長質問」と大きな声で手を挙げ、議長の許しを得て質問したのです。「町長の説明したインポジウムについて質問いたします」と切り出すと、議場のあちらこちらから笑いがこぼれ、町長も口に手を当てて必死に堪えていましたが、ついに笑ってしまいました。するとその議員は「私がインポジウムの質問をしているのに笑うとはけしからん」と怒り始めました。その時町長は笑いを止めて議長に答弁を求め「議員の質問にお答えいたします。シンポジウムは町を起こすために行いますが、インポジウムで町は起きません」と、見事にやり返しました。さすが町長です。激怒した義いいの横に座っていた別の議員がその議員の背広を引っ張り「おいインポジウムとシンポジウムは違うぞ」と諭し、始めて自分の知らないのに知ったふりに気付いたようでした。
アメニティといえば「飴をなめてお茶を飲むこと」なんて笑い話もありました。またコミュニティなんて横文字は日本語に訳せば訳すほど難しくて説明できないものまであります。パソコン用語のドットコムを聞いた親父が息子に「ドットコム何処が混むのと父が言い」なんて川柳を産んだりするのです。
まあ知らないことは背伸びをせず素直に「知らない」と言った方が賢明かもしれませんね。
「知らぬのに 知ったかぶりの 見栄を張り 結局化けの 皮剥げ難儀」
「知っている くせに知らぬと 嘘をつき 偽証罪など 恥の上塗り」
「てっ辺が 薄くなってる 頭下げ 下向く顔から 舌が覗いて」
「わが値打ち 自分が思う 程でなし 威張ってみても たかが知れてる」