shin-1さんの日記

投稿者: | 2008年5月7日

○割れかけた湯飲み

 私の家の台所には、大小様々なコップや湯飲みがあります。どれがコップでどれを湯飲みというのか分りませんが、新築祝いや子どもの記念品、観光土産などでもらったものが殆どだと思うように、文字入りで焼かれたものが多いようです。それ程沢山あるのに毎日お茶を飲む湯飲みは殆ど一つか二つに絞られて使われているのです。昨日の朝、お茶の量丁度良いため愛用している小さめの湯飲みにヒビが入っているのに気がつきました。その湯飲みは紛れもなく観光土産で、どこかの観光地で買った物なのですが記憶にないほど古いのです。

 湯飲みの側面には「理想の妻」と箇条書きでかかれています。

 「理想の妻」

 一、夫の好き嫌いを早く飲みこむ妻

 二、快活でたっぷり従順で優しく上品な妻

 三、どことなく初々しい感じのする妻

 四、家政と料理が上手で糠味噌臭くない妻

 五、気転ががきいて利口ぶらぬ妻

 六、何事にも理解と同情を持とうとする妻

 七、働き者でコセツカぬ妻

 八、話し上手聞き上手の妻

 九、飾り気なく身だしなみのよい妻

 十、世の中に遅れぬだけ修養につとめる妻

 殆ど毎朝、この湯飲みでお茶を飲みながら、お茶の量が減る度に湯飲みを横にして、「お前のことを言っているようだ」と、妻に向って歯の浮くような褒め殺しをしているのですが、昨日の朝は「この湯飲みも割れ始めた。お前の理想もこれで終りだな」と湯飲み宜しく茶化して話しました。妻曰く「お父さん、これは男の目から見た願望でしょう。この『理想の妻』「理想の夫」にして、少しは私の納得いくような夫になるよう努力したらいかが」とやり返されました。確かに私は妻の言うように「理想の夫」ではないかも知れないと自分でそう思うのです。だのに一方的に妻にだけ理想を求め続けていたようです。

 それでもこの頃少し優しくなったと妻は私を褒めてくれます。これまでは「仕事」第一で、殆ど家庭など顧みなかった私です。家事全般、子育て、近所付き合いどころか、私の仲間や友人の付き合いに至まで、全てを妻の仕事と位置づけて強要してきました。それでも妻は一生懸命働いてきたし、私のリタイア後の今も薄めの化粧や普段着に甘んじて働いているのです。

 妻が「近頃優しくなった」というのには訳があります。職場である歯科医院の同僚の娘さんが急逝して前触れもなく辞めたため、二人の職場が一人となり、忙しさが二倍になったため、帰ると肩が凝ったと疲れをあらわにするものですから、ぎっくり腰の治療で通った整体院の揉み方を見よう見真似してマッサージしてやるのです。最初は「まあ珍しい、雨でも降らなきゃいいが」などとからかわれていましたが、今は「そこを揉んで」と肩や腰の凝った部分を強要するのです。

 妻の体を揉みながら、「俺も優しくなったものだ」と自分に納得させ、妻も「優しくなった」と褒めてくれるのです。少しだけ嬉しくなって、最近は家の周りの草引きなどもするようになって、いよいよ「理想の夫」を目指しつつあるようです。

 間もなく割れるであろう運命の「理想の妻」の湯飲みを、自戒の念をこめて写真に収めました。

  「理想妻 書かれた湯のみ ヒビが入り 夫婦のヒビと ならないように」

  「理想だけ 妻に求めて 生きてきた 勝手な夫 少し変身」

  「観光地 今度は俺の 目標を 書いてる湯飲み 探し求める」

  「理想夫を 求める箇条 作ろうか 少しやましい ことがあるから」