shin-1さんの日記

〇炊き出しとおにぎり

 役場に勤めていた初期のころは常備消防がなかったため、当時の町長さんがいち早く火事などの現場に駆けつけれる条件があるのは役場だと言って、役場消防班というのを作りました。その後広域の常備消防が設置されてからも暫く消防班は災害や火災が起きる度に大活躍をしていました。

 災害といえば炊き出しです。台風などの災害で出動した時には役場の女性たちが公民館の調理室へ集まり、ご飯を炊いておにぎりを沢山作ってくれました。塩の効いたおにぎりに沢庵だけというシンプルなものなのに、合羽を着て手も洗わぬほどに頬張るおにぎりは、空腹の胃袋へ吸い込まれて行くようでした。

shin-1さんの日記

 今はおにぎりも24時間開いているコンビニに行くと、色とりどりのおにぎりが陳列に所狭しと並んでいて、若者たちはおにぎりを非常食ではなく常食として食べているようですが、外国からやって来たハンバーガーにどこか似ていて、さしずめおにぎりは和風ハンバーガーといったところです。

 東日本大震災の被災地では今なお避難所で、行政やボランティアによる炊き出しが行われていて、その主流は手っ取り早いおにぎりだそうですが、避難所生活も長期化するとただ空腹を満たすだけの食事では栄養不足となり、体の偏重を訴える人が多いと聞きました。私のようにパンよりどちらかというと米食を好む純日本調な人間でも三度が三度おにぎりでは、嫌気が差すのは当たり前なのです。温かい握りだちのおにぎりは何ともいえないお米の味がして美味しいものですが、冷めて堅くなったおにぎりはどこか無機質な気もするのです。


 地震と津波に加え、原子力の不安におののきながら避難所暮らしをしている人のことを思うと、一日も早い仮設住宅の完成と移転が望まれますが、人間は集団生活もそれなりに意義はあるものの、個人のプライバシーが保てない環境では、隣や集団を意識しなければならず、ストレスが溜まって病気にすらなるのです。現代の日本では個室、個食、孤独な暮らしが主流を占めていて、集団で何かをするような暮らしには慣れていない人が多いのです。

 こんな非常時ゆえ、個人のプライバシーは二の次にされがちですが、これからの災害時の避難のあり方も時代と共に変えて行かなければならないとしみじみ思いました。それでも冬の厳しい寒さに耐えて長年生きてきた東北地方の人たちは、殆ど不平を言うこともなく整然として、一ヶ月余りの避難所生活をしています。今回の震災で私たちが見習うべきことが山ほどあるような気がする今日この頃です。

 

  「おにぎりは 日本文化と 胸を張る それでも毎日 食べれば飽きる」

  「避難所で 炊き出し励む 人がいる 感謝しながら 食べる人あり」

  「みんなより 一人で過ごす 人多い 日本の暮らし 変化している」

  「おにぎりは どこかおふくろ 味がする 頬張る度に 逝きし母顔」

 

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