○山口県岩国錦帯橋日帰りの旅(その①)
私たちが子どものころは、4月4日はお節句と呼ばれて、母に作ってもらったご馳走弁当を提げて、何日も前から作った出城のような場所へ出かけ、みんなで一日中遊んで過ごしました。子どもの数の減少と時代の進展でそうした伝統的な遊びもいつの間にか廃れてしまったことは返す返すも残念です。
今年は3日が日曜日なので妻は前夜から巻き寿司をまいたりして花見弁当を作っていました。私たち夫婦だけならどうってことはないのですが、92歳の親父のために二段重ねの弁当を作るのですから、妻の優しさは相当なものだと感心感謝をしました。
前日土曜日の夜弁当作りが一段落したところで夫婦の相談話が始まりました。3日には二人とも予定が入っていないので、どこか近場へでも出かけようかというのです。早速妻は5時過ぎに起床して親父の弁当と私たちの朝食を作りました。親父の隠居へ弁当を持って行き、「今日は位置に留守にする」と伝えて、午前7時に家を出発しました。行くあてのない日帰り旅行ですから、高速道路に乗ってしまなみ海道を走りながら左に行くか右に行くか話し合い、結局は左に進路を取って、福山西から竹原インターまで山陽自動車道を走り、岩国の錦帯橋を目指しました。岩国へは講演やフロンティアグループの世界遺産を巡る旅などで度々訪れているし、私が退職した6年前、息子が博多どんたく見学の旅をプレゼントしてくれた折、帰りに夫婦で訪ねた場所なのです。
この日は天気予報では大きな崩れはないと聞いていましたが、朝から曇り空で今治通過時は小雨がぱらついていて北東よりの風で肌寒く感じましたが、時間が経つに連れて天気は回復して絶好の行楽日和となりました。
錦川の河川敷に車を止め、錦帯橋の上をゆっくりと歩きました。対岸の橋の袂の桜はまだ4~5分咲きでしたが、気の早い花見客が桜の木の日田に陣取り、焼肉の煙をもうもうと出してお酒を飲んでいました。折角咲いた桜も焼肉の煙に燻され少々迷惑な話です。
武家屋敷周辺をゆっくりと散策しましたが、歴史の重みとでもいうべき重厚な佇まいに感心しました。古い町並みは来る度に新しい発見があるもので、前回は止まっていた二つの噴水が水しぶきを上げていたり、昼時ということもあってすっかり有名となった岩国寿司を賞味することが出来ました。
錦帯橋は50年に一度架け替え工事が行われるそうですが、前々回一つだけ真新しい、前回は全て真新しい橋を見学、今回は自然に調和した見事な橋を見学することができました。50年に一度だと85歳まで生きる予定私の人生ではもう新しい橋を見ることはないだろうと思うと、前回や前々回はとてもラッキーだったと思うのです。
こんなに広い日本なので、ましてや岩国なので知り人にも出会わないだろうと思いきや、橋の上で一人は私が気付いて、もう一人は相手が気付いて、偶然な出会いに驚いてしまいました。自分の妻と二人旅だったことも幸いで、何年か前講演先で美しい中年女性の案内で街を漢学していた折、地元の人に偶然にも出会い、その人に「若松さんはええ人とお忍び旅行を楽しんでいた」と要らぬ噂話を立てられ、すっかり迷惑したこともあったのです。まあ風評被害は何処にでもあるし、逆に昨日のように妻と一緒にだと、風評効果になるかも知れないので、出会いもまた楽しいものなのです。
「右左 どっちに行くか 考える 足の向くまま 気の向くままに」
「何年か 前に訪ねた 錦帯橋 妻と二人で この橋歩く」
「水明の 錦の川に 架かる橋 まるで虹橋 幾重重なり」
「美味しいよ 呼び込みさんの 声吊られ 店に入りて 名物食べる」