○フォグホーン
今日は朝から濃い霧があたり一面立ち込めて、国道を走る車も昼間だというのにライトをつけて走っている様態です。海に目をやるともう100メートルも向うは完全に霧の中で、港に停泊している船の舳先さえも見えない有様です。
私は若い頃漁師をして海に出ていましたが、このような日の海の上は陸上よりもひどく、視界がまったく効かなかったことを覚えています。当時私が乗っていた漁船にはレーダーなどの設備がなく、霧になると船のエンジンを止めて霧の晴れるのを待つ以外手立てはありませんでした。
霧は海水の温度と空気中の温度の差によって出るのですが、瀬戸内海ではどちらかというと霧は春の風物詩といわれていましたが、今年は季節が遅れているのかこの時期に濃霧注意報が発令され、地元の猟師さんたちは海も穏やかなのに漁にも出られず、イライラが募っているようです。
わが家の海の資料館・海舟館」の展示物に一風替わった物が置かれています。興味のある方がから、「これは一体何をする道具なのですか?」とよく聞かれますが、じつはこれはフォグホーン」という、昔の船が必需品として船に備えていたものなのです。
(今ではすっかり珍しくなったフォグホーン)
手前の丸みを帯びた部分は蛇腹のようになっていて取っ手を慮手で動かすと中に空気が吸い込まれ、その空気が内臓の笛を鳴らし、真鋳製のラッパを通して音が出るような仕組みになっているのです。瀬戸内海を公開する船はこの音を聞いて相手の船の存在に気付くのですが、フォグホーンを持ち合わせていない船はバケツや船ベリを叩いて衝突回避をしていたようです。
レーダーのない頃の船はこのように、「そんなに急いで何処へ行く」とばかりにのんびりしていたため、余程のことがないと衝突などしませんでした。つまり自然の力にひれ伏していたのです。ところがレーダーが開発されると、霧など無視してレーダーを頼りに生みの上を我が物顔に走り、結果としてレーダーを過信し過ぎて衝突事故を起こすのですから、遺憾に人間が愚かであるかがよく分かるのです。
今日は朝からテレビやラジオで船の運転にはくれぐれも用心するよう再三再四注意を呼びかけていましたが、くれぐれも安全運転をして欲しいと願っています。
「五里霧中 瀬戸内海に 霧が出る レーダー過信 用心航海」
「フォグホーン これはどのよう 使うのか 知る人少なく 今に死後かも」
「霧見れば 裕次郎など 思い出す 俺も古いな 年代ものだ」
「切り晴る まもなく暑い 夏が来る 季節変わり目 自然いたずら」