○美味しいツワブキとワカメ
今年の春は昨年の夏の猛暑や冬の厳しい寒さの影響でしょうか、春先の植物などの生育が何となく可笑しいような気がするのです。普通の年であればとっくに散っているはずのソメイヨシノの桜が、4月半ばになってもまだ十分楽しめるし、例年通り植えたわが家の菜園のジャガイモの芽も、遅霜などの影響もあって、やっと地中から芽を除かせた程度なのです。椿祭りが早い年は春の来るのが早いといわれていたのに、固陋の言い伝えもたまには外れるもののようです。
昨日近所の人に聞けば今年は筍があまり出ないそうです。私たちが子どものころによく食べたイタドリもいつもの年のような芽吹きがない様で、今年こそはと意気込んでいたものの空振りに終りそうです。それでも人間牧場界隈には草刈りの度に邪魔になると思いながらも残して育てているツワブキが太く伸びて、わが家ではも何度も美味しいツワブキの煮つけをいただきました。ツワブキは本来自生野生の植物ですが、最近はこの時期皮を剥いたツワブキが三歳として重宝されて、農家などでは畑の隅に植えている人もあり、採った採らないで多少のトラブルがあるようです。
ツワブキは剥き難い皮を剥くのに一苦労です。さらに灰汁が強いので手先や爪が真っ黒になるので、お母さんたちは嫌がり、皮を剥く作業はもっぱら外へ出ることの少ないおばあさんやおじいさんに委ねられるのです。昔はそんなことものともせずに妻は皮を剥いで調理して食べさせてくれていましたが、今は近くの歯科医院に勤めているため、さすがに手を汚すことが出来ず、もっぱらツワブキの下ごしらえは私の役目となっているので、採集する時一瞬ためらうのですが、味に負けて自分の手に負える分だけ持ち帰るのです。
私とて講演などで外江出る機会が多いので、調理などの時使う簡単で薄っぺらい使い捨てのビニール手袋をはめて皮を剥きます。こうすることで灰汁はそれほど手につきません。とっておきの秘策は食酢をお皿に入れて、酢を手先に付けながら皮を剥くとこれまた灰汁がつきにくいのです。
私たちの地方では、「筍メバル」とか「ツワにハゲ」などといわれています。いずれも旬と相性の良さを言っているのです。筍が出る頃のメバルも、ツワブキが食べられるころのカワハギも旬で、筍もツワブキもメバルやカワハギと一緒に煮ると美味しいのです。
この頃になるともう一つ楽しみなものが海藻類です。双海の海では水ぬるむこの頃になると磯に出て、ヒジキやワカメを採ります。ヒジキは茹でるのに手間隙がかかるため躊躇しますが、ワカメはさっとお湯をくぐらすだけでいいので、持ち帰ってよく食べるのです。量が多い時には家の庭にビニールテープを張って天日干しにすると保存食になるのです。海草は体にもいいので海草サラダにしてドレッシングで食べます。そして最近私が凝っているのは茎ワカメの佃煮です。ワカメを干す時にできる残菜ですが、これを細かく刻んで砂糖と醤油で味付けして煮込むと、これがまたご飯のお供になって食が進むのです。
私は魚の下ごしらえ以外は料理をしませんが、ワカメの茎の佃煮は別格で、最近この佃煮に自家製梅酒と自家製ハチミツ、それにコンソメを入れることで絶妙の味に仕上がることを発見しました。今年はまだ2度ばかりしか作っていませんが、たまたまやって来た孫たちが喜んで食べてくれるのをいいことに、昨日も作りお裾分けして持ち帰り、わが家は一週間前に作って冷蔵庫で保存しているものを食べました。東日本大震災で多くの人たちが避難所暮らしをしています。心だけでもこうした野生のものを使い勿体ない精神で暮らしたいと思っています。お陰様でツワブキの煮つけやワカメの茎の佃煮が食卓に上り、春を満喫しています。
「最近は 質素倹約 精神が 備わりワカメ ツワブキまでも」
「褒め言葉 言われて私 佃煮を 作って孫に 持ち帰らせる」
「手少々 黒くなっても リタイアの 私平気と ばかり作業す」
「ツワブキと ワカメ二品が あるだけで 食卓どこか ご馳走思う」