〇産直市は生き残れるか
最近近く遠くで、農協直営の産直店が「新鮮」「安価」を売りにして相次いでオープンし、話題と消費者をを集めています。それはそれとして結構な話なのですが、何年か前道の駅なるものが日本全国に流行り病のように増えた時期があり、私もそのブームに加担した一人として複雑な気持ちを禁じ得ないのです。
道路交通網の整備が進むに連れて、かつての国鉄の駅のような機能を持った施設が欲しいと考え出されたのが路の駅構想です。休憩機能、情報機能、交流機能の3つを掲げてスタートするや、車社会を反映してかあっという間にドライバーの心を捉え、全国に広がって行ったのです。しかし当時は特産品開発が後手に回り、どの路の駅に行っても同じような商品が並び、特徴ある顔を作るのに苦労をしていたようです。
道の駅の設置には当初行政の肝入りで第三セクター方式、つまり行政が出損金の2分の1以上を出資して設立する方式が採用され、民間活力の導入をうたい文句に華々しくスタートしたのです。しかしその経営結果は議会で報告義務を持つものの、責任の所在があいまいで赤字になると行政が穴埋めしてその場しのぎの自転車操業を繰り返し、後戻りも出来ず取り返しのつかない状態のまま議会の集中砲火を浴びて、合併の混乱もあり民営化を模索する動きがここにきて加速しているようなのです。
そんな状態を見てか、あるいは安値や健康志向、それに農家の流通参加意識も働いて、組合員離れに歯止めをかけようと、農協は第二の道の駅と言われる産直市場を相次いでオープンさせました。農協にとっては結婚ブームに乗ったブライダル産業、高齢化社会に対応した葬祭産業や特老介護事業もそれほどの効果を上げぬまま、見切り発車のような形で産直市場を相次いでオープンさせているのです。
しかし全てが上手く行くわけもなく、産直や地産地消を謳い文句にしたものの年中地元の農産物を並べれる訳でもなく、結果は中国産蜂蜜を並べてみたり、長野県の高原野菜がどっさり大型トラック運び込まれたりして、域の頃のためのなりふり構わぬある意味偽証が横行しているのです。
先発の所ショッピングセンターや地元の商店街は時ならぬ産直店の影響をもろに受け、閑古鳥が鳴いて死活問題に発展している所も多いと聞くのです。
この農協出展に右往左往しているのは農家と消費者で、価格破壊の狭間で農家には余分な労働が強いられ、消費者たる暇と小金を持ったおじさんやおばさん族が軽四自動車に乗ってわが物顔で温浴施設と産直市を渡り歩いているのです。
この奇妙な農協と消費者の行動はこれから市民の信用を得るのかどうか、注意深く見守らねばならないような気がしています。例えば前述した蜂蜜ですが、よくよく商品を手にとって表示を見てみると「中国産」それも蜂蜜なのに水あめなどが堂々と入っているのです。あれだけの量が398円ですから、蜂蜜の味と香りを加えた水あめと言った方が正しいのかも知れないのです。
先日オープンしたばかりの産直市では惣菜売り場には巻き寿司や稲荷寿司、から揚げまで並べられて、ショッピングセンターと何ら変わらない品揃えになって、「えっこれも産直市なの?」と目を疑うような品揃えに落胆しているのは私一人ではないと思うのです。
行政が安易に踏み込んだ道の駅や温浴施設、農協が同じように安易に踏み込んだブライダルや葬祭施設、そして今また安易に農協が踏み込んだ産直市は、むしろ行政は市民のために、農協は組合員や消費者のために何をするべきか問いかけているようでもあるのです。
「相次いで 産直市が オープンす 農協何を 目指しているか」
「よく見れば 同じようなる 顔ばかり お客も品も 特徴がなく」
「中国産 蜂蜜匂い するけれど 中身水あめ 安いはずです」
「朝早く 起きて商品 品揃え 農家多忙で 嫁など来ぬわ」