○スローフードという言葉とジャコ天
昨日の愛媛新聞の一面「道標」という企画記事に「スローフード」という言葉の意味を食のジャーナリスト大本幸子さんが詳しく書いていました。
「あなたが食いしん坊でなくっても、「スローフード」という言葉を、一度や二度は耳にしたことがおありでしょう。さてクイズです。スローフードって何?。①ゆっくり食べること。②月日や時間をかけてつくる料理や食品のこと。③郷土料理のこと。④ゆったりとした気分になれる料理のこと。答え。どれも不正解。実際のところ、日本では右のいずれかをスローフードと称する場合もありますが、スローフードってそもそもはファーストフードの脅威を覚えたイタリア人たちが考え出した伝統食回帰運動のことなんですよ。時は1986年、マクドナルドがローマのスペイン広場へ出店したしたことから、あの時代、ハンバーガーとコーラ文化が世界中の若者を魅了していたことはご存知の通り。90年にはモスクワ出店で話題を呼びましたよね。 ー中略ー しかし、これではいかんだろう、うちの土地の生産物はどうなる、と危惧した北イタリア、ブラの町の人たちが、ファーストフード侵攻に伝統食を消されてよいのかと声を上げたところ、国内外から賛同者が続出し、世界的なスローフード運動となったわけです。
この運動が世界に共感を得たのは、単にファーストフードは悪いと言い立てるのではなく、前向きに理念を定めたことでしょう。すなわち①現状のまま放置しておくと消滅する恐れのある伝統的な食材、料理、質のよい食品、酒を守る。②現状のまま放置しておくと消滅する怖れのある質の良い食材(農産物、酪農製品など)を、複数人で育て提供する生産者を守る。③消費者に伝統の味の教育を進める。概要としては以上。関係者でなくても、それは」大切だと思いますよね。この運動は、島村菜津さんの著書『スローフードな人生』(新潮社)などによって日本にも知られるようになりました。
でもわれわれ日本人は横文字に弱くて、おまけにスローって言葉がとても情緒的なものだから、本来の意味を知る前に、心の琴線が震えてしまったのですね。スローって何だか素敵。間をおかず、スローライフという言葉が出現し、後は続々、スローな郷土料理、スローな酒、スローなインテリアなどなど、スローがつけば何でも売れる様相。『スローフードな旅』とは、脱都会美食会一泊旅のことでした。でもいいんです。そんなの宣伝文句なんですから。そういう表現があっても。でも、本来の意味をちゃんととらえないで、情緒だけを独り歩きさせてしまって、本家本元に仰天されるようなことになると、ちょっと困っちゃいますよ。
-後略ー
同感した記事でしたが、私の町ではこのスローフードとファーストフードを組み合わせて成功した食べ物があります。それはじゃこ天です。じゃこ天は愛媛の伝統料理です。昔はまな板の上で小魚を叩き、それをカガスに入れてつなぎとすり合わせてつみれを作り油で揚げたシンプルなものです。これは多分スローフードと呼ぶに相応しい食べ物です。このじゃこ天に串を刺して歩きながら食べるというファーストフード感覚を取り入れたところ、ふたみシーサイド公園の名物食べ物になって、今や行列の出来る店となって年間5500万円を売り上げるようになったのです。スローフードに名を借りた商売やファーストフードを悪いと決め付けるのではなく、どういう折り合いをつけて現代風にアレンジするかは知恵の出しどころだと思うのです。だっていくらスローフードがよいからといっても、消費者に敬遠されるような食べ方や売り方では商売が立ち行かないのではもともこもないのですから・・・・・。
若者の暮しと私たち古い時代の人間の暮しには大きな開きがあります。私たちはものを歩きながら食べたらお行儀が悪いと厳しく躾されました。しかし今の若者は歩きながら食べるのがファッションだし食文化なのです。歩きながら食べることは今でもいいとは思いませんが、そのことだけを大上段に振りかざしたところで、「あんたは古い」と言われるのが落ちなのです。
世の中には流行があります。でも大本さんのいうように、スロ-フードを履き違えないようにだけはしないといけませんね。
「串刺しの じゃこ天片手 ビールぐい 格好いいねと 言わんばじかりに」
「スローフード ほんとの意味を 知ってるの 言いたくなるよな フレーズ乱れ」
「イタリアに 意味の語源は あるという 知ってか知らず 誰でも口に」
「新聞を 読んで知らない 知恵学ぶ 俺また一つ 利口なったり」