○人間は失敗から本当に学べるのか
観光カリスマ百選に選ばれてから、私のような田舎者の話でも聞いてやろうと、全国各地から招聘されてノコノコ出かけるのですが、行く先々で「あなたは今までどんな失敗をされましたか」とよく質問されます。その度に私は「100のうち30くらいしか上手くいってません」と答えます。「えっ、たった30パーセントですか」と殆どの人が不思議そうに問い返してくるのです。私は即座にプロ野球を引き合いに出しながら、「あれほど野球を仕事にしている人でさえ、3割バッターはそんなにいません。私のような凡人が3割を記録するのは凄いことです」と答えるのです。人間は失敗したら次は必ず失敗しないように努力しますが、努力してもまた新たな失敗の種が生まれてまた失敗をくり返すのです。失敗から様々なことを学習するのですが、果たして失敗から本当に学べるのか疑問な所があります。
先日パチンコの好きな友人に出会いました。彼はいわゆる晴パチ雨パチ、つまり晴れた日にはパチンコ雨の日にもパチンコと形容するほど暇さえあればパチンコに行きます。私と同じ年齢ですから退職しての願望は「誰はばかることなく思い切ってパチンコがしたい」というささやかな望みでした。そのとおり2年前退職しパチンコを趣味とする優雅な日々を過ごしています。私「おい儲けとるかい」。彼「いやああかん。近頃は連戦連敗や」。私「もう潮時、パチンコは辞めたらどうか」。彼「妻もそういう。このままだと年金も半分半分の法律ができたことだし、家内から離婚されるかも知れん」。私「・・・・・・・・・」。彼「・・・・・・・・・・」。私「ところでよう資金が続くな」。彼「煙草飲みは煙草銭、酒飲みは酒代、パチンコはパチンコ代、不思議と何とか工面できるものよ」、私「不ーん、そんなもんかねえ」。彼「こないだの負けを今日は絶対取り返すからな」と、相変わらずリベンジを誓うのでした。
もう一人私の友人に株で大儲けをし、大損をした経験のある人がいます。儲けたときの彼はこの大金で独立して事業を始めようと思ったそうですが、その内大損をし結局はプラスマイナスするとかなりのマイナスとなり、親族が中に入って清算をする失態となりました。その席で彼は「もう株などこりごりです。これからは真っ当に働きます」と誓約書まで書いたのに、何年かすると悪い癖は甦り、あわよくばの人生を送っています。
パチンコ好きな彼と株の好きな彼を見る限り「人間は失敗から本当に学べるのか」と疑いたくなります。少なくとも彼ら二人の意志の弱さからは失敗からいい教訓は見当たらないのです。
先日、旅先へえひめ地域政策研究センターの清水研究員から電話がかかってきて、まちづくりの研修に使うので「失敗の10ヶ条」を作って欲しいと依頼を受けました。遠出の旅だったものですから電車の中で持ち合わせた使い古しの封筒に次のようなことを思いつくままにメモして送りました。
「地域づくり失敗の10ヶ条」
第1条 どんな地域にしたいか夢がない
第2条 はずみ車でなく振り子時計の原理の理論に終始している
第3条 やらないことをやれないと言い訳ばかりをしている
第4条 補助金や人の懐を当てにして身銭をきらない
第5条 失敗や反対にあったら直ぐに止めてしまう
第6条 成功した事例を物真似したがる
第7条 社会の流れや時代の流れを読めない
第8条 経済を無視している(入力と出力のバランス)
第9条 地域を巻き込んでいない
第10条 自立できていない(人も地域も)
◎番外編「地域づくりないないづくしの10ヶ条」
①溜まり場がない
②リーダーがいない
③知識人がいても知恵者がいない
④ロマンがない
⑤行政を動かせない
⑥社会の要請がないし社会を揺さぶれない
⑦計画がないし反省と成果がない
⑧楽しくない
⑨新しくない
⑩美しくない
「失敗を 重ね重ねて 二十年 なおも失敗 だから人間」
「酒タバコ 体に悪い 医者が言う だけど止めない だから人間」
「またやった 今度はへまを するまいと 思ったけれど だから人間」
「この癖は 死ぬまで止めぬ あきらめて 上手に付き合い だから人間」