○雷様
「朋樹君雷が鳴ってるからおへそを取られないようにしっかり抑えていてね」と、先日わが家にやって来た孫に雷様の話をしました。孫は「どうして雷様はへそを取るの」と反対に返しましたが「地震・雷・火事・親父」と怖いものの代名詞に数えられている割には雷について知らないことが多いのです。広辞苑によると「雲と雲、雲と地表の間に起こる放電現象。またこれに伴う音。積乱雲の内部に発生した電位差によって生ずる。雷雲によって生ずる原因によって熱電・界雷・渦雷などに分ける。いかずち」とありますが、私が孫に知ったかぶりで話したのは「雷神」のことで、くものうえにいて虎の皮の褌をしめ、太鼓を打ち、へそを取るという昔聞いた言い伝えを言っているのです。「雷が落ちる」という言葉も実際は金属や背丈の高い物に放電する本当の落雷と、大きな声を出して叱られる言葉と二つのいみがあるのですが、両方とも怖いものの代名詞のように言われています。
昨日の深夜から早朝にかけて、わが町では時ならぬ雷が延々5時間もなり続け、雷が怖いと思っている妻などは布団の中で眠れぬ夜を過ごし、雷が鳴る度に私の腕をつかむのです。私はその度に目が覚め、結果的には妻の眠れる夜に付き合わされてしまい少々寝不足の感じがしましたが、雷など平気だと言いつつやはり気持ちのいいものではないなと思いました。
私たちが子どもの頃はよく学芸会があって、学芸会の度に太鼓を沢山背中につけた雷様が出てきたものです。最近はそんなユーモラスな雷様の姿を見ることもなく、またドリフターズの高木ブーさんが、「8時だよ全員集合」で見せたユーモラスでデブっちょな雷様も、大分イメージが違うなあと思いつつ画用紙がないので、菓子の包み紙の裏側に大きな雷様の絵を書いて説明した後、「ゴロゴロゴロゴロ、雷様だー」といって孫を部屋中追い掛け回しながら遊びに講じました。三歳の孫は本当におへそを食べる仕草を私がする度にシャツを上げておへそがあるか確認して「あった、あった」と逃げ惑うのでした。孫の頭にはこの私が書いた雷様のイメージがインプットされたことでしょうが、絵本の中に上手に書いた雷様の絵があったので、私の脚色で更なる雷様の話を面白おかしく話してやりました。
昨日の朝、私たち夫婦はお遍路さんとして四国88ヶ所参りをするため徳島へ向けて早朝5時に出発しましたが、伊予のインターチェンジを過ぎて間もなく北の空に大きな雷の閃光を見ました。一瞬辺りが明るくなり、高速で走る車にも地響きが伝わる程の大きさで閃光柱が見えました。最近はテレビでもこうしたシーンはよく見かけるのですが実際に見たのは久しぶりのことで、妻は始めて見る閃光に驚いた様子で「引き返さなくて大丈夫?」と聞き返すほどでした。聞くところによるとその閃光の後に激しい雨が降り、近隣の市町村では雷が原因でかなりの地区で停電になったそうです。幸い私のパソコンもわが家のテレビも難を逃れましたが、アンテナを通して雷が落ちると一瞬にしてパソコンやテレビが駄目になるそうなので、雷が鳴り始めると電源コードやアンテナ線を抜くことが肝心と、雷多発地帯の群馬県の人に教わったことを思い出しました。
お寺を巡っていて、お寺の境内には杉の巨木が黒く焼けた後が多数見えました。お寺の屋根には避雷針が取り付けてあるのも見ました。ゴルフ場で落雷に会い死んだ話も聞きました。自然とは凄いものだと雷の閃光を見て思いました。
「雷と 呼ばれる親父 いなくなり 日本の雷 母が代役」
「パソコンを 台無しにした 雷に ツケをやりたい そんな心境」
「秋雷の 音に驚き へそ隠す 孫の姿や 滑稽滑稽」
「あの電気 使えぬものか 考えりゃ ノーベル賞を 貰えるかもね」