人間牧場

〇原節子の東京物語

 昭和の大スターで美女とうたわれた、原節子さんが亡くなったことをテレビや新聞で知り、忘れかけていた三丁目の夕日的な昭和の思い出が蘇りました。私は昭和19年の生まれですから、戦後映画で活躍した原節子さんは一世代前の人なので、銀幕では見たけれど、恋焦がれるほどの人ではありませんが、それでも一世を風靡した大スターの死を多くのオールドファンが悲しみ、テレビでは原節子さんが出演した映画を、毎日のように紹介しているようです。

原節子原節子2 妻はその中から見たかった、「東京物語」という映画をダビングしたようで、昨晩風呂から上がり孫たちが自分の部屋へ引き上げてから、二人でゆっくり視聴しました。東京物語は小津安二郎監督の代表作ですが、出演の笠智衆や東山千恵子、佐野真一、大坂司郎、香川京子、杉山春子など往年の大スターが勢揃いして、渋い演技をしていました。広島尾道に住む老夫婦が、成長著しい東京に住む、息子や娘の家を東京見物も兼ねて訪ね歩きますが、息子や娘は日々の仕事が忙しく、口では上手いこと取り繕っても、結局疎んじられ、傷心の思いで帰路につき、大坂の息子の所へ立ち寄って帰宅して直ぐに、母親が危篤状態になり急逝するのです。

 母危篤の電報に右往左往したり、臨終や葬儀のドサクサも、50年前の物語設定なれど、どことなく物悲しくどことなく、現代の世相に通じる思いで見ました。孫も可愛いが子どもはもっと可愛いし、自分の子どもより自分の戦死した息子の嫁さんが、一番老夫婦のことを気遣ってくれるシーンは、原節子さんの役柄にピッタリで、共感しながら見ました。聞けば笠智衆さんと東山千恵子さんの年齢設定が70歳前後で、私たち夫婦の今と同じ年齢でした。妻は「えっ?、東山千恵子さんが亡くなるシーンで「68歳」と言ったシーンには、ただただ驚きました。

 日本人の平均寿命は85歳を越えて、今や世界一の長寿国となりました。この物語の時代にもしタイムスリップすれば、私たちはもうこの世とおさらばしなければならない年齢なのです。しかしこの映画の裏に描かれた人間模様を思うと、親子の人間関係も長寿社会の問題も、50年経ったというのに少しも改善されず、むしろ悪化してより深刻になっているように思えるのです。生きたくても生きれなかった昔と違い、現代は医療が発達し、生きたくないのに生きなければならなくなった人も多くいるのです。人間は何のために生きるのか。考えさせられた映画でした。

  「原節子 亡くなり昭和 また一つ 消えて悲しい 思いで浸る」

  「原節子 出演映画 テレビにて 夫婦二人で 会話しながら」

  「おばあさん 68歳 亡くなった 妻の年齢 比較ビックリ」

  「今昔 比較しながら 映画見る バック思い出 社会も映り」

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