〇リユースすることになった二つの鍋
不用物を回収・再生し再資源化・再利用することを【recycle】、手を加えて改良し作り直すことを【reform】、再使用することを【reuse】といい、これらを3Rといっていますが、資源の少ないわが国では3R運動を行っているものの、相変わらずの消費大国で、月に一度の不燃物回収の日などは、「こんなもの何で捨てるの?」と目を疑うようなものが出されているのです。行政もそのことを知っていて、リサイクルセンターなどを作って対応していますが、一度消費癖のついた国民を元に戻すのは容易なことではないようです。リサイクル、リフォーム、リユースという言葉は、研修会などでしばしば聞き、とくにリサイクルという言葉などはもう日本語化しているほど、私たちの暮らしの中で使われているのです。
先日長浜へ行った帰り、道端軒先に沢山の道具類が出されていました。全て埃を被り明らかに不燃物回収に出される運命にあるようなものばかりなのです。鍋・釜・鎌・鋸・鍬などなど、かつてはこの家の日々の暮らしに重要な役割を果たしてきたであろう道具類ですが、鍋も釜もかまどがあった時代のもの、鎌・鋸・鍬などは野良仕事に使ったもので、既にそんな暮らしが殆ど存在していないのです。
郷愁に駆られた訳でもなく、勿体ないと思った訳でもないのに、鍋と釜を見て「人間牧場のかまど小屋で使えそう」と思い、家の中に声をかけました。中から80歳がらみの顔見知りのおばさんがごぞごぞでて来ました。聞けば全ていらないものなので、「欲しければ全部あげる」ということでした。そうはいっても要らない物までいただく訳にもいかず、鍋2つとはがま1つ、それに餅つき用の杵の頭だけをいただいて帰りました。
早速全てを車から降ろして水場に運び、亀の甲タワシでゴシゴシこすりながら水洗いをしました。全て古びてはいますがまだまだ使用可能なようです。傍で見ていた妻は「そんな汚いものを何にするの」と怪訝そうでしたが、私の構想を話すと納得した様子でした。
先日製材業を営む従兄弟にお願いして板切れを貰ってきていたので、親父に訳を話して鍋の蓋を2つ造ってもらうよう頼みました。昨日の午後親父は早速鍋の蓋造りをしてくれました。二枚の杉板をボンドで一枚に引っ付け、カンナをかけて鍋の大きさを測って円を描き、鋸で切って円形にしました。いびつな所をカンナをかけて修正し、取っ手をつけて見事な鍋の蓋が2時間余りで完成しました。
ひとつの鍋は吊鉤がなかったので、親父は自分の工房にあるステンレス製の棒を取り出して何やら曲げては伸ばししていましたが、ご覧の通り見事な吊鉤も再現してくれたのです。いやはや91歳の年齢とは思えない出来栄えに尊敬の念が湧いてきました。
「捨てればゴミ、「使えば資源」なんて言葉もよく耳にしますが、私はこの鍋を人間牧場のかまど小屋で様々な料理に使おうと思っています。さしあたり手ごろな大きさなので味噌汁を作る道具として使いたいと思っています。と同時にやって来た皆さんに味噌汁を食べながら不用になった鍋に命を吹き込んでリユースしたことを話そうと思っています。これも立派な環境教育なのです。小さな鍋だけど人間牧場で第二の人生を送ることになったこの鍋はこれからもう一踏ん張り働いてもらう予定です。
「捨てるから 要らないあげる 頂いた 二つの鍋に 親父蓋つけ」
「鍋に言う もう一働き してくれと 鍋も納得 化粧し変えて」
「この鍋は リユースですよ 言いながら 味噌汁食べる 顔が浮かびて」
「気がつけば 勿体ないと 言う世代 いない時代に なってしまって」