○みちのくひとり旅
何処から何処までをみちのくというのか分らぬまま、東京から東北新幹線に乗って岩手県一ノ関へひとり旅をしてきました。わが町を発ったのはまだ8月の終りでした。僅か1日のことですが岩手県へ着いたのが9月です。肌に受ける感じはやはり秋の気配というのでしょうか、朝夕は20度を下回る爽やかさに驚いたものでした。
一ノ関へは昨年11月27日にお邪魔していますので、1年足らずの間に二度もお邪魔するのです。きっかけは東京にある国立社会教育研修所の公民館講座に私が講師として招かれ、参加した人の中に室根村の金森勝利さんがいて、深いご縁をいただいたのです。東京の凄さは東京から学ぶことも多いのですが、東京に集まった日本全国の地方の人と出会えることです。東京での研修がご縁で全国へ広がった例は枚挙に暇がないほどです。前回は一ノ関市全体の研修でしたが、今回の研修は室根青年たちが企画した研修だけに、何としても伺いたいと思っていました。今年の春早々金森さんから打診があった時は9月の第一日曜日だったので一もニもなく引き受けたものの、1ヶ月前になって急遽土曜日の開催と一日繰り上がってしまいどうしようか悩みました。というのも9月第一土曜日は私が23年前に始めた夕焼けプラットホームコンサートの日なのです。青年たちがバトンをつないでくれているのに私がいないのも少し変だと思いましたし、私の知人友人には既にメールやチラシを送って宣伝に一役買っているのですから、知人友人からはブーイングなのです。
私は一ノ関の金森さんが結婚するその披露宴に出席することを口実に出かけました。友人いわく、「一ノ関の結婚式から帰ったら引き出物のお開きをしよう」というのです。そして一ノ関の地酒を買ってくるよう頼まれました。帰り際すっかり忘れていたのに金森さんは引き出物と称して地元の銘菓「白あんぱん」を持たせてくれました。わたしも我に帰って新幹線一ノ関駅の売店で地酒を3本買い求め重いのに手持ちで長旅を続けました。家に帰ると妻が「まあお父さんがお土産を買うなんてどういう風の吹き回し?」と不思議がられました。帰る早々友人に出会い、「岩手県の結婚式はどうだった」と声をかけられました。「ああよかったよ。近いうちにお土産の地酒でいっぱいやろうな」とお茶を濁しておきました。
(森は海の恋人運動で木を植えている山)
(室根山から見える気仙沼湾)
今回の研修会には楽しみが二つありました。まず一つは室根という地名から宮城県気仙沼唐桑の漁師さんたちが山に木を植えた話の現場を見たかったことです。岩手県室根といっても、室根山に降った雨水は宮城県気仙沼湾に流れ込みます。唐桑の名産牡蠣を育むのですが、その事を知っている漁師さんはその感謝を込めて山に木を植える運動を起こしたのです。環境問題への関心も高まってその運動は今や全国に広がっています。「森は海の恋人」というキャッチフレーズは何という響きのよい言葉でしょう。その舞台となった室根山に公民館長さんの案内で登る幸運にも恵まれました。
(室根山の山頂で)
(発祥の地となった牡蠣の森の標柱、もう20年も前のことだそうで、その時植えたブナなどが立派に成長していました)
またもう一つの楽しみは4年に1回開かれる国の重要無形民俗文化財に指定されている室根神社を見てみたいという思いでした。勿論祭礼は閏年の翌年陰暦9月19日なので、ミリことは出来ませんが、前回一ノ関へ行った折その話を聞いていたので何としてもと思っていたところ、偶然にも小山館長さんがその一番詳しい方で、これまた偶然にも室根山の山腹に神社があって、ダブルなラッキーに恵まれました。室根神社の大祭については書くことが余りにも多いため、次の機会に委ねたいと思います。
さて今回の地域づくり講演会は合併して一関市になったけれど、旧室根村の青年連絡会が企画してくれました。合併してもこうした青年たちの発想を大切にしたいという市長さんの肝入りで実現しました。また合併をしたけれど旧室根村長さんは区長としてかなりの仕事を任されるシステムになっていて、区長さんも参加したり商工会長も参加する大掛かりな取組が行われていました。青年たちも一生懸命取り組んでいたようです。
青年が地域づくりの表舞台から消えて久しいこの時代に凄いと思いました。この仕掛けの裏には金森公民館主事さんが着かず離れず指導をしており、かつて公民館に勤めていた頃の私の姿を見る思いでした。
室根山の山腹から、あるいは頂上から見える室根の家並みはイザベラ・バードが「日本奥地紀行」に書いた「桃源郷」とも表現したい山村の佇まいで、住んでみたくなるような原風景でした。
私の仕事は彼ら若者の心に火をつけることですし、青年の企画した「地域づくり講演会」に参加した人に、青年の心意気を伝えることですから、約100分の与えられた時間、大いに語りました。一夜の宿をお借りした岩手屋さんの女将さんともすっかり打ち解けてお話しし、三度目の正直が来る事を願って村を後にしました。
「イザベラが 桃源郷と 言ったのは この村風景 同じ東北」
「青年が 輝き生きる 室根村 公民館に 支援主事有り」
「唐桑の 漁師が山に 木を植える 室根の山に 今もその木は」
「まるで避暑 朝夕肌に 風涼し 再び残暑 ふるさと目指す」
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一関市花泉町の者です。先日は地域づくり講演会を拝聴させていただきました。双海町のまちづくりのお話、とても感銘を受けました。それと同時に、その地域それぞれによさがあり、それを磨いていかなくてはならないと思いました。
もう社会教育からも青年団からも卒業してずいぶんたつのですが、地域づくりの気持ちは持っていたいと思います。
(私のホームページで講演会を紹介させていただきました。ご了承ください)