○菊の実験からの学び
「あなたは宝くじで一億円が当たったらどうしますか」と、若い頃にあるタウン情報誌の取材を受けたことがあります。私は即座に「買ったことがないので当らない」と答えてしまいました。先日書棚の本を水平線の家へ移動するので整理をしていたら、その記事の載った情報誌が出てきて、懐かしく読んだのです。その中に「あなたの夢は何ですか」というのもあり私は「将来人間牧場を作りたい」と書いているのです。西暦で逆算すると35歳のころの想いだと思うのですが、何とこの頃には早くも人間牧場構想が頭を持ち上げていた事になるのですから驚きです。その後すっかり忘れていたその夢はやがて50歳代になって再び頭を持ち上げ、嫁の実現に向かって動き出したのですから私という人間は自分ながら相当執念深い男だとしみじみ思うのです。でも「夢はドリームでなくターゲットである」という私の造語も、人間牧場を手に入れた今となっては素敵な響きにさえ聞こえ、夢を持つことの大切さを感じました。
私はよく講演の中で「菊の実験」の話をします。これも若い頃の話ですが公民館の花いっぱい運動の一環で菊づくりの普及活動を公民館主事としてやりました。公民館の裏には所狭しと鉢を並べて菊を作り、ホルモン処理した菊苗を立てて要望に応じ各集落へ無償で配りました。勿論私自身も見よう見まねで菊を育てたものです。その折3本立ての菊を100鉢程作りましたが、7月になると背丈も伸びて支柱を立てる作業に追われますが、その折不思議な光景を目の当たりにしました。支柱が2本不足して3本の菊の一本だけに支柱を立てて、そのうち立てようと思いながらもついつい仕事に追われすっかり忘れていたのですが、1ヶ月も経って見てみると、支柱を立てた菊はぐんぐん伸びているのに一本は無残にも元から折れ、あとの一本はへなへななのです。私はその菊をそのまま放置してみました。結果的には一本の菊だけが生長して秋に花を咲かせましたが、人前をはばかる見苦しい姿となりました。あくる年、今度は同じ事を意識的にやってみましたが、結果は同じでした。私はその実験の模様を次のように結論付けました。
「成長の同じ高さの3本の菊に一本だけ支柱を立てると結果はその一本だけが何故か成長促進します。支柱を立てた菊は支柱で固定され風雨で折れないばかりか支柱という目標が出来、その支柱に勝とうという無意識な意識が生まれるのです。物言わぬ植物でさえ目標という支柱を与えればこのような結果になるのです。ましてや百獣の王たる人間は押して計るべきで、目標を持つことの意味を私に暗示しているのです」。
「菊の実験」は「カエルの実験」「氷の実験」とともに私の三つの教えとして、水平線の家の高座落語ならぬ楽語話のネタにしておきます。あなたもこんな実験をやってみて下さい。
「もの言わぬ 菊さえ支柱 立てたなら 勝とうと努力 夢を持とうよ」
「ドリームと 思いし夢が 実現し やれば出来るさ 夢ターゲット」
「濡れ手粟 つかむが如し 宝くじ 買う人いるから 地域振興」
「一億円 買わぬ私は 当らない 誰に当った 分らず終い」