○あらしやま山荘を訪ねる①
昨日は来週開催予定の年輪塾の打ち合わせを兼ねて、大番頭米湊さんと小番頭松本さんの三人で、八幡浜日土にある清水塾頭の家を訪ねました。寒気の影響で少し肌寒いものの空は青く晴れ渡り、国道378号線の横に広がる伊予灘の海も穏やかでした。三崎半島を貫通するような長い長い鼛女トンネルを抜けて保内の町外れまで国道197号線を走ると、「金山出石寺左」の矢印が見えてきました。そこからは谷沿いに細いみちをキロ近く進みました。松本さんは一週間前にも清水さん宅を訪問しているので、彼の道案内で進みましたが、人間牧場への急で狭い道を笑っている清水さんに笑い返してやろうと思うほどの狭さでした。
米湊さんと松本さんが同行する時、特にお酒が入る時は決まって酒を飲まない私がアッシー君なので、この日も私の愛車に乗ってのお出かけでした。
12時30分という約束の時間でしたが、せっかちな性分の私のことゆえ、少々早く清水さん宅に到着しました。清水さんはこの日の弁当を仕入れにいてあいにく留守でしたが、松本さんが携帯で電話をかけてくれ、少しそこら辺を散策するよう言われました。お目当てだった庭の八重桜は今が満開でかぐわしい匂いを漂わせて私たちを迎えてくれました。
二地域空間を行き来し暮らしを楽しんでいる清水さんは、手が行き届かないのか、庭には少し雑草が伸びていました。咲き始めた霧島つつじの見事さもあって、私は勝手に倉庫から鍬を探し、雑草の草削りを始めました。雑草も野趣のうちと怒られそうでしたが、少しの時間勤労奉仕をさせてもらいました。手前味噌ながら庭に一筋の道ができ、赤い霧島つつじの花が一際美しくなったような気がしました。
(農家の上がりかまち。大黒柱の太さと、石臼を利用した活花で住人のセンスのよさが伺い知れました)
(座敷の障子窓から入る採光は優しさに包まれていました。
(床の間の違い棚下に座布団を敷いて鎮座する福助さんの像はどこか二宮尊徳さんに見えてきました)
間もなく友人の菊池さんと奥さんを伴って帰って来た清水さんの案内で自称「あらしやま山荘」と名付けた自宅内へ入りました。清水さんの家は昭和初期の古民家の風情を色濃く残していて、玄関や障子窓、格子窓などの窓越しに見えるやわらかい春の日差しが何ともいえない味を醸していました。さすが清水さんが自慢せず自慢するだけあって、感心しながら座敷に座りました。清水さん宅は標高200メートルだそうですが急峻な地形ゆえ殊更に座敷から見える山々や団端に点在する農家農村の遠望は素晴らしく、これだけでも必見の価値があると思いました。耳を澄ませばウグイスが、目を凝らせば山桜が、鼻を嗅がせば草の香りが、まさに山里ならではの春の香りでした。
(窓からの遠謀も絶景でした)
「人の家 留守に訪ねて 草取りす 住人戻りて 思わず驚く」
「この里も 不便がゆえに 人過疎に 子どもの声も 少し遠のき」
「この部屋で 大の字なりて 昼寝する こんな贅沢 住人だけしか」
「入るなり 大黒柱の 大きさや 黒光する かまちに感心」