〇ささやかな夢の貯金箱
わが家には子ども時代を思わせるような幾つかの貯金箱があります。その中でも私が管理するのは3つです。一番大きいのは昔の郵便ポストの形をしたもので、馴染みの郵便局長にいただいたものです。この大きさたるや尋常ではなく、もう8年くらい使っているのですが入れても入れても一杯にならないのです。これまで一回だけ一杯になったことがあって、郵便局へ持って行って計算してもらったところ、確か5万円くらいあったと記憶していますが、これも職場で小銭ができた度に入れていたためで、リタイアした今ではそれほど小銭もできないため、一年で貯まる金額は知れているのです。それでも持ち上げてみると少し重くなってきたようなので、来年は思い切って満杯を目指したいものです。
その横に小さな可愛いイノシシ型の貯金箱が置いてあります。これはどこかの銀行でイノシシ歳にちなんでいただいた貯金箱ですが、「おかもとともき」と黒マジックサインペンでひらがな書きされています。私の大きな郵便ポスト型の貯金箱が欲しいという孫をなだめるために名前を書いて孫に渡したものです。孫はもうそのことを忘れていますが、それでもわが家へ来て私の書斎へ入る度に「あっ僕の貯金箱」といっては、「お金を入れて」とせがむのです。その度にポケットの小銭を入れてやるのですが、まだまだ開けるほどは貯まっていないようです。でも小さい頃から貯蓄を奨励することはいいことだと思いながら、折につけお金の大切さや、お金が貯まったら何に使うかささやかな夢を話しているのです。
さてもう一つの貯金箱は私が管理しているといっても、私と妻の夢の貯金箱なのです。100円ショップで毎年買ってくるかなり大きめの缶詰型です。退職してから始めたささやかな一年完結の貯金箱なのです。私たち夫婦には退職という人生の節目で夏と冬のボーナスがなくなりました。安月給の公務員だったためボーナスの金額は少なかったのですが、それでも年2回のボーナスはわが家にとってまるで夢をいただくような楽しみだったのです。その夢がなくなったのを機会に、せめて一年に1度でいいから、そしてささやかな金額でもいいから夫婦にボーナスを出そうという話になったのです。
そのため何かにつけて「使ったつもり貯金」をこの缶詰め型貯金箱に入れ始めたのです。この貯金箱には原則として二人で入れます。「お酒を飲みに行ったつもり」「外食したつもり」のようなものから、今年最大だったのは長年使っていた洗濯機が故障して買った電気屋さんにトラックに積んで持って行ったところ、コンピューター管理したデーターで保証期間と分かって無料修理した際の「洗濯機を買ったつもり」でした。
私たち夫婦は若い頃は喧嘩もしましたが、今はそんな馬力もなくお互いがいたわりながら生きれるようになって、格好良く言えば見てくれはおしどり夫婦のような暮らしをしています。多分妻の手のひらの上で転がされているに違いないのですが、それでも12月のクリスマス前後の大安吉日に開けるのを楽しみにしているのです。
今年は少し早いものの12月16日の日に御開帳しました。今の机の上を全て片付け二人が向かい合って座り缶切りで私が開けるのです。テレビだと音楽でも欲しい一瞬です。
中から出てきたお金は小さな穴から入れるため全てのお札は8つ折りにされています。それを一つ一つ広げてしわを伸ばすのですがその姿はまるで強欲夫婦の小銭勘定といった感じでした。開ける前に妻と私がそれぞれ金額予想を言うのですが、いつも多いほうがいいと心の中では思いながら、二人とも少なめの予想を言い合うのです。結果は当たったこともないのですが、計算してみるとまあまあの金額でした。私たち夫婦はこのお金で正月の準備と一泊二日程度の小旅行を計画します。家に90歳になる親父がいるので遠出の旅行はご法度とばかりに小さな旅行をこれから正月休みに二人で企てるのです。
ささやかな夢の貯金箱は今年も私たち夫婦にささやかな夢を与えてくれました。早速今日は外出の帰り道ダイソーに立ち寄って僅か100円で少し大きめの貯金箱を買って帰ろうと思っています。来年もこの貯金箱がいっぱいになりますようにと、二人で今日からせっせと節約生活をします。
「ささやかな 夫婦二人の 貯金箱 今年も夢の ボーナス入る」
「100円の 投資で買った 貯金箱 缶切り開く 中からザクザク」
「嬉しいね 使ったつもりの 節約で 何処へ行こうか 夢まで買える」
「後ひとつ 増やして夢は 外国か? 何時になるやら 孫と競争」