○城ヶ島の雨
昨日は大雨の中を岡山県和気町商工会の招きで合併記念セミナーの講演に出かけました。往復500キロのマイカーでの長旅で、帰宅時間は午前0時を回っていました。雨の中の走行なので妻は相当心配したらしいのですが当の本人は元気そのもです。今朝はその疲れもあってか多少気だるさが残り、書斎の窓越しに雨に濡れた庭を見ています。普通の人は雨を嫌がるのですが、お百姓さんや漁師さんにとってみれば久々の休みでほっとしているのではないかと思います。最近は田植えも早くなり、田休みなどの風習もすっかり捨てれてしまいましたが、昔は公民館に集まって田休みの酒盛りなどが年中行事として行われていました。
庭の隅に植えられているアジサイが雨に濡れて一際美しく見えます。雨をうっとうしいと思うのか、雨を楽しむのかは人それぞれでしょうが、雨を見る度に思い出すのは「城ヶ島の雨」という北原白秋の歌です。城ヶ島は神奈川県三浦三崎にありますが、愛媛県立宇和島水産高校の練習船の基地が三浦三崎だったのです。私は18歳の頃この愛媛丸に乗船して南太平洋へこの港から出航しこの港へ再び帰って来ました。出港準備の忙しい中を私は友人とともに渡海船に乗って晩秋の城ヶ島へ渡りました。島の一角に北原白秋の歌碑が建っていました。
「城ヶ島の雨」
雨はふるふる 城ヶ島の磯に 利休鼠の 雨がふる
雨は真珠か 夜明けの霧か それとも私の 忍び泣き
舟はゆくゆく 通り矢のはなを 濡れて 帆あげた ぬしの舟
ええ 舟は櫓でやる 櫓は唄でやる 唄は船頭さんの 心意気
雨はふるふる 日はうす曇る 舟はゆくゆく 帆がかすむ
この唄を作った北原白秋が神奈川県三浦半島の突端にある三浦三崎に住んでいたということを知ったのは随分後のことなのですが、森繁久弥さんが哀調を込めて歌う城ヶ島の雨という歌にはこんな私の少年の頃の思い出があるのです。
それにしても、雨を見て利休鼠の雨おは凄い表現力です。利休鼠とは灰白色にやや緑かかった色をいいます。城ヶ島の緑が雨に濡れていたのでしょうが、利休鼠は焼き物の色としても使われます。私が自著「昇る夕日でまちづくり」の本の序文に書いた「雨過天青雲破処」もやはり焼き物の色なのですから、実にいい表現だと、あらためて北原白秋の感性の豊かさに驚いています。
ここ2・3日は梅雨のぐずついた天気が続くようですが、今日は久しぶりに窓の外の雨を眺めながら、雨を楽しみたいと思っています。
「早苗田に シトシトシトと 音もなく カエル鳴く声 傘が演出」
「昨日雨 今日も明日も 雨雨雨 ツバメは低く 元気に飛び交う」
「この雨を 利休鼠と 白秋は 唄に歌って 心和ませ」
「塩漬けの 梅をまぶすや 昼下がり 匂う香りに ツバを飲み込む」