○逆手塾ルポ④
水平線の家には大小の灯りがついています。海側に面した全面ガラス張りの構造のため、普段は採光がすこぶるよく少々曇っていても電気をつける必要はまったくありません。今回の逆手塾の開催は電灯をどれだけ点けたらどれだけ明るかのいわば実験でもありました。夕闇迫る頃になると明かりが欲しくなり点灯したのですが水平線の家の内部もウッドデッキの屋外も門灯も申し分なく、闇夜に水平線の家が幻想的に浮かび上がりました。日曜日に操業のため出漁した漁師さんの話によると、普通は暗闇部分のこの場所に突如として光々と明る人間牧場あたりは、凄く目立つのだそうです。
しかしこの明るさには問題点が一つあるのです。「飛んで火にい入る夏の虫」そのままに、たくさんの虫を呼び寄せてしまうのです。設計士の息子もそのことは設計段階で計算に入れていたらしく、2階ロフトの窓は全て内側網戸で虫の侵入を予防しているのです。問題は3間半の海側窓からの侵入です。それを阻止するための大蚊帳製作プロジェクトがわが家の家族でスタートして、既に製作は終わっているのですが、実験的に設置しただけで、まだその設置に要する時間や大蚊帳の効果は未知数のままなのです。
夕闇迫る頃参加者に内緒で押入れにしまっていた大蚊帳を取り出し設置する事になりました。みんな右往左往しましたし、蚊帳のすそ終いのために木の棒を打ちつける作業が加わるハプニングがありましたが、何とか設置が完了したのです。
少し写真が暗いようですがこのような雰囲気で見事大蚊帳プロジェクトの成果はありました。雨もなく風もない穏やかな天気に助けられ、明くる日の朝までこの大蚊帳は見事に虫をシャットアウトする事に成功したのです。外から見ると暗闇に浮かぶ大蚊帳の風景は幻想的で、まるで源氏物語の世界のようでもありました。
夕方から始まった交流会は室内とウッドデッキが一体化しまさに圧巻でした。せっかく遠い所から来るのだからと、妻の発案でかんぱちの刺身と漁協女性部のじゃこ天を加え、飲むほどに酔うほどに大満足でした。夕日に変わって顔を出した満月の月もこれまた味わい深い自然の演出です。12時には月の明かりで宿舎となる池久保公民館まで移動しましたが、門田真一さんや地域政策研究センターの心ある人たちは飲み足らず、延々2時過ぎまで酒を肴に交流を深めました。
長い一日が終わり10人ほどが雑魚寝雰囲気で人生について語り合いました。家族のこと、人生のこと、仕事のことなど人それぞれが人それぞれの悩みや夢を語り合いました。人生の達人ではないけれどその都度コメントを求められアドバイスするのですが、悩みを解決したくてやって来た「あべまりあ」さんとは特に深く話し込みました。片道切符の旅を思いついたのもそんな思いからだったのでしょう。明くる日彼女夫妻は吹っ切れたのか元気に人間牧場を後にしましたが、別れ際涙を浮かべて宮崎さんの奥さんと抱き合って別れた姿がとても印象的でした。
この日発売されたという彼女の本はみんなの協力で沢山売れました。文章も彼女の絵も素晴らしく、息子は五右衛門風呂のポスター製作を彼女に依頼していたようです。
逆手塾最大の効果は、人と交わる、人に感化される、夢を見つける、やる気を起す、実践する、効果を上げる、人に感化することです。その道具立てが人間牧場のフィールドであったり水平線の家なのです。
「蚊帳の中 入った俺たち 何か変 虫かごの中 人が入って」
「平凡な 暮らしの中に 平和あり 悩み聞きつつ 俺は幸せ」
「涙出る 感じて動く 嬉しさに 見えなくなるまで 手振り見送る」
「大蚊帳は まるで源氏 絵巻だね 誰かが言った そう言われれば」