shin-1さんの日記

○春真っ盛りの人間牧場界隈

 昨日は久しぶりに休暇が取れました。休暇といっても別に定職についている訳ではないので休もうと思えば休めるのですが、このところ大学の授業の準備や提出書類、それにこまごました用事があって忙しかったものですからついつい人間牧場への足向きが疎かになっていました。昨日は絶好の春日和で数日前の各地で雹が降ったり雪便りがある肌をさすような寒さは遠のいて、日向だと汗ばむほどの陽気でした。人間牧場の草丈は一週間前とは違って腰近くまで延びて、早く刈って欲しいような叫びに見えました。

 自宅から持参した草刈機に混合油を満タンにしてエンジンをかけ、丸刃で刈って行くのですがまるで長く延びた頭をバリカンで刈るように面白い程綺麗に刈られて行くのです。人間牧場の畑は殆どが急峻で地下足袋に麦藁帽子のいでたちでも時々ひっくり返えったり転がったりと四苦八苦です。草刈機はもう10年も使っている年代物でエンジンの調子は最高なのですがかなり重く手や腕にずっしりときて、体力減退の私に長時間続けての作業は無理なため、油が半分くらい減る度に腰を下ろして休憩です。これがまた気持ちがよく、時には刈り取ったそこら辺の草を少し集めると立派な草ベットになります。梅の木の木陰に陣取って汗を拭い魔法瓶に入れたお茶を飲む、大の字になって空を見上げる、雲ひとつない青空は何処までも澄んでまるで大空に吸い込まれそうな雰囲気でした。

 今は山が燃えているような錯覚にとらわれます。木々の芽吹きと新緑の色が若草色で、絵に書きたいような爽やかな色なのです。そこここには早くもピンクやオレンジ色の山つつじの姿もちらほらと見え始めました。近くでは卵を温めているのでしょうかキジが「ケンケンケーン」と甲高い声を張り上げて鳴いています。遠く近くの山々からはやはり私と同じように草を刈っているのでしょう、草刈機の音がまるでこだまのように山や谷を越えて聞こえて、長閑な農村の風情を醸していました。

 昼は昼でまた楽しみがあります。妻の作った弁当を広げてたった一人で食べるのです。今日はおにぎりが3個、おかずは玉子焼きと筍の煮物が主なもので佃煮や漬物、それに果物が添えられています。愛妻弁当と呼ぶべきでしょうが、弁当箱の上に「疲れるので草刈は3時まで、気をつけて」と走り書きのメモが入っていました。嬉し恥かし妻の気配りです。私は夢中になると時間を忘れて作業に没頭し、日が暮れるのも忘れる間抜けな男であることを長年の連れ添い経験から分っているための警告文なのでしょう。

 夕方4時過ぎになって息子が人間牧場へやって来ました。「携帯電話をかけても応答がない」と渋い顔です。我に帰ってポケットの中に入れた携帯を見るとマナーモードのままで着信文字が表示されていました。息子は建設中の倉庫兼作業小屋の進捗状況を確かめに来たようでしたが、建築の仕事をしている人間らしく「こことここを大工さんに直してもらおう」と私に説明するのです。小屋はもう殆ど出来上がっていました。押し戸は割った板がお洒落に貼り付けてあり、小屋には勿体ないような雰囲気です。最初はこの小屋は大洲の亀本さんから貰った耕運機を格納するためでしたが、出来栄えがよいのでこの中を遊びの空間にしようと思っています。耕運機は右の方におだれを作りたいと思い親父に相談したら既にそのプロジェクトも進んで、地元の土建屋さんにコンクリートを流してもらって基礎を作るよう依頼もしています。来週には出来上がる予定です。次々と進む人間牧場の姿に肝心の活動が追いつかないのですが、まあぼちぼち急がずやりましょう。

  「春盛り 絵になるような 山の色 燃え立ちいずる 香りを添えて」

  「三度目の 春を迎えし 牧場に 今年も生えし 山蕗摘みぬ」

  「また一つ 建物増えて 物語る 自慢貰いし 赤い耕運機」

  「卵抱きし キジの鳴き声 こだましつ 春は長閑に 牧場満ちて」 


 

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