shin-1さんの日記

○越前とかけて何と解く・その心は

 先日講演を頼まれ福井県を尋ねました。福井県といえば東尋坊や永平寺を思い出しますが、四国に住む私たちにとってみればやはり大阪より向こうの地ゆえ、少し縁遠い地であることは否めません。そんな人もいるだろうと思うのでしょうか、平成の大合併による市町村名に越前という名前をつけているところが、越前市、越前町、南越前町と3つもあって、私のような不案内な人間にはむしろ余計混乱してしまうのです。これは何も福井県だけではなく、お隣の高知県だって四万十市と四万十町が隣接してあるのですから別に珍しいことではないのです。

 花の好きな私が越前といって思い出すのは越前海岸に咲く水仙の花です。越前の水仙は私の町に自生するものと同じ日本水仙で、金冠のある清楚な花は正月ころの花として愛されていますが、地球温暖化の影響でしょうか、越前では早くも花が咲き始めたそうで、地元新聞にそのことが載っていました。

 自然に咲く水仙は温度管理が難しいため、自然のわがままな気候に翻弄されます。越前のように出荷を目的に栽培している所では、正月用の花として希少価値があるのですが、こう暖かいと正月までに咲き終わって、せっかくの商品価値が台無しになるのだそうです。

 越前といえば越前ガニも有名で、手なのか足なのか分りませんが皮をむいて食べる味は冬の味覚として日本人に愛されているのです。私は皮をむく面倒くささから余りカニが好きではありませんが、講演の前日に福井入りしたため、担当した谷口さんの案内であるこじんまりした寿司屋の暖簾をくぐり、日本海の味覚を思う存分いただきました。その中には勿論カニもあって、その味は格別でした。とくにセイコガニという小ぶりのカニのカニみそなどは絶品で、他のお寿司とともに忘れられない福井の夜の思い出となったのです。

 カウンターの向こうで推すぉ握っていた大将と土地の言葉を交えながらお話をさせてもらいましたが、「越前という言葉で困ったものが一つあるのですが、何だと思いますか?」と質問されました。私は水産高校出身ですからとっさに「越前クラゲ」と返したら、「お客さんは通ですね」と持ち上げられました。

 私もテレビや新聞程度しか見たことはありませんが、越前クラゲといえば日本海側の漁師を悩ます厄介ものなのです。成長すると傘の直径が②メートルにもなる巨大クラゲで、帯状うは最大で200キロといいますからまるで小錦のような大きさです。大正時代にこのクラゲに名前を付けたのは東京帝国大学の岸上鎌吉教授だそうですが、標本が取れたのが昔越前の国だっただけのことなのですが、地球温暖化の影響で今は日本海どころか津軽海峡を超えて三陸など太平洋沿岸にまで南下しているのです。6月末に長崎県対馬沖に現れ10月には静岡、11月には愛知や三重にまで現れたお言うから恐るべき発生量です。

 越前クラゲの触手には毒があって網の中に入った魚は刺されて傷んでしまうため商品価値もなく、また大量の越前クラゲが網を破るなどの被害が出ているようです。

 東大の先生が何気なくつけた越前クラゲという名前は、越前という名前こそ宣伝してくれているものの、余りいい名前ではないと関係者は冷ややかな反応です。

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