○体の曲がり角
日本人の寿命はまるでうなぎ上りのように天井を目指して上がっています。織田信長の時代は良く映画やテレビに登場する決戦前の能の舞で、「人生50年~」と謡われているのが本当だとすると、かなり短命だったようです。日本人の平均寿命が80歳を超えた現代では、あちらこちらに100歳を超えた人がいて、しかもボケもせず矍鑠として生きているのです。医学の進歩や機械的な延命措置によって本人の知らないところで植物人間になって生死の境をさまよい、生死の選択についても議論が分かれたりしていますが、いずれにしても長く生きられる時代になったことは嬉しい限りです。しかし長生きをする時代だからこそその生き方が問われているのも事実で、できるだけ人様に迷惑をかけないような生き方をしなければならないのです。
数日前妻が高校時代の同級生とお喋りの会を持ちました。伊方町に住むOさんと松山市に住むHさんと妻の3人は、戦後の貧しい時代を生きてきたためか質素倹約型で、この日も松山の共済施設の2千円の入浴付き昼食ランチを頼み、ご厚意でお喋りのお部屋まで貸していただいたそうです。妻にとっても久しぶりの懐かしい面会なので楽しみにして、日曜日の昼前に出かけて行きました。
食の細くなった3人には2千円のランチはかなりボリュームもあって、食べきれないほどのご馳走だったそうですが、ひとしきり食べたり話したりした後入浴をするころになると、妻以外の二人は入浴を断ったそうです。聞けばOさんはコレステロールの数値と血圧が高く薬を飲んでいるとのことでした。またHさんは体に発疹ができてお風呂どころではなかったそうです。お二人のご主人も既に退職されて悠々自適の暮らしをして微笑ましくも羨ましいと思っていたのに、意外や意外健康に不安を抱えて暮らしているようです。
妻は帰るなりその話をしながら、「そうだ私も健康には注意しなければ」と、何を思ったのか健康体操を始めました。テレビには毎日飽きもせず、「ダイエット」「美顔」などの宣伝が流れ、最近は夜の番組にまでサプリメントのコマーシャルが流れているのです。妻は昨晩風呂上りにテレビで観た貴花田体操と奈美悦子体操をしました。何のことはありません。貴花田体操とは大きく手を広げ足を広げた土俵入りの姿のままの静態と、奈美悦子体操は足を広げて洗濯ものをたたむ動作だけなのです。人が見ていないことをいいことに私にも一緒にやるよう勧められやりましたが、これもその気になってやればかなりきつい体操でした。
私も妻ももう若くはありません。妻の友人がそうであるようにそろそろお肌の曲がり角はとっくに過ぎた体の曲がり角なのです。暴飲暴食をしたり夜更かしをしても平気だった昔と比べ、食べすぎたり寝れなかったりするとすぐに体にこたえるような年齢になったのです。「私もいい歳になった」と友人二人を見てしみじみと思ったそうです。
「同級の 二人の異常 見るにつけ 私も歳と 納得しきり」
「六十の 峠越えれば 下り坂 ブレーキかけねば 今に危ない」
「体操を 一緒にせよと 言う妻は 変な格好 これで健康?」
「妻は歳 かく言う私も 歳ですね 健康第一 とにもかくにも」