○水槽の掃除
わが家の玄関に水槽があります。長男がどこかから貰ってきた金魚が7匹泳いでいます。昨年の春までは長男の命令を受けた学生の次男が面倒臭そうに引き継いでやっていましたが、その次男も学校を卒業して就職したため、長男の仕事に戻ったものの、長男夫婦は現在のところ松山暮らしだし、子どもが出来て仕事も忙しいらしく誰も面倒見なくなってしまったのです。金魚を飼い始める時自分で世話が出来ないのなら止めとけと言った手前、多少汚れていても黙認していました。しかし正月から殆ど掃除をしていないことに気がついた妻が今朝、「お父さん、水槽が汚れて見苦しいから掃除をして下さい」というのです。私は反論して「息子に電話しろ」と一発即発の感じになりました。妻はそれでも「長男も忙しそうなので、あなたは暇でしょう」と追い討ちをかけるのです。「わしは暇ではない」と反論するものの、妻はさっさと仕事に出かけて行きました。挙げた手を下せないとはこのことでしょう。しばらく時間が経って宅配便の方がチャイムを鳴らしたので玄関に出て荷物を受け取りました。確かに美観を損ねるほど汚れています。「まあ仕方がないか」と心の葛藤を打ち払い水槽掃除をする事にしました。
息子が持っているスポンジ、網、バケツなどの掃除の七つ道具を取り出し、まずバケツに水を入れて7匹の金魚を取り出しました。それから水をバケツで抜き取り、スポンジでゴシゴシ洗うのです。水がぬるんだといいながら水槽の水はまだ冷たく、背筋にブルブルと感じながら丁寧に水垢を取り除き、綺麗に拭き取りました。続いて浄化ポンプを取り出し水道口へ持って行き中に溜った水垢を綺麗に流して再び水槽に戻し空気を送りました。エアーが送られポンプは順調に作動しています。
水槽の水を全て変える金魚への付加が大きいため、少し汚れた水ながら2割程度を残し、丹念に網ですくい、新しい水をバケツで4杯入れ替えました。水は少し濁っていますが、水槽の外から金魚が見え始めました。この分だと2時間もすれば透き通った水になることでしょう。
私はふと、シーサイド公園のイベントホールにある水槽の事を思い出しました。5本のアクア水槽を配置し、海水魚と淡水魚を飼っています。地域振興課長の時代はこの水槽の掃除はボランティアでもっぱら私の仕事でした。朝5時から約1時間、毎週金曜日を掃除の日と定めて一生懸命十二年間も水槽の掃除をしたのです。まだ掃除に慣れていない頃だったと思いますが、淡水魚の水槽の水を落とし中に入って掃除をしているといきなり、西洋大ナマズが飛び跳ね、何と外に出てしまったのです。これは大変と外に出て暴れまくる大ナマズを水槽に戻しました。家に帰ってテレビを見ると何と阪神淡路大震災が起こって、長田区の火災炎上が映し出されていました。「地震とナマズ」は科学的には正しいデーターが無いのかもしれませんが、あの時のナマズ騒動を思う時、この珍現象の体験は将来想定される南海地震に役立つかもしれないと一人考えるのです。
退職しシーサイド公園の水槽の掃除もなくなったのですから、せめてわが家の水槽ぐらいはと、妻とやりあった朝の口喧嘩を深く反省しています。
「この水槽 誰が掃除を するべきか 暇なあなたと 言う妻しかり」
「掃除して 気持ちよさそな 土佐金を 宅配兄ちゃん 褒めて帰りぬ」
「餌食べず よく生きている 土佐金に 俺も食べずに 生きれないかと」
「水槽を 見れば必ず 思い出す 阪神淡路 なまず騒動」