shin-1さんの日記

投稿者: | 2007年6月19日

○シルバー割引となった2等の切符

 一昨日は旅の日程の都合で小倉から旅客船に乗って松山観光港へ着きました。普通だと博多から新幹線で広島まで出て宇品経由で松山観光港へ向かうのですが、夜遅くの広島からの船便がなく、広島に一泊して早朝の船便で帰っても朝からの会議に間に合わないため、仕方なくノロノロ旅となりました。しかしスピードな旅に慣れている現代社会にあって、超スローな船旅は何とも超安価で贅沢な旅だと実感しました。

 JR小倉駅から船着場までは時間もあるので人影もまばらな動く歩道を歌を歌いながら歩き、港までの一直線の道を迷うことなく到着です。早速切符購入に必要な旅客名簿に備え付けの鉛筆で所定の欄に記入し「若松進一・62歳」と書き込み、カウンター嬢に見せると、「免許証をお持ちならお見せください」というのです。「私は嘘をついてない」と不信に思いながら背広の内ポケットに手を突っ込み、免許証を差し出したのです。「はい結構です」といっていわれた3520円の金額を差し出しました。受け取った切符には「シルバー割引20%」と記されているではありませんか。生まれて初めて受ける「シルバー割引」に私の心は妙に複雑な心境でした。「ああ、私もシルバーと言われる年齢になった」と思う諦めと、「20%得した」という優越感が交錯したのです。そのうち「20%の得」を忘れて、「そもそもシルバーとは何歳からなのか」という疑問が生じ始めたのです。普通世間の常識だと高齢者などの基準は65歳だと思うし、老人クラブの入会もその年齢だと聞いていました。この日は皮肉にも近づきつつある自分の老いを切符の「シルバー20%割引」という文字で初めて確認した記念すべき日となりました。

 それにしても「2等」という言葉がまだ乗り物の世界では平気で使われていることも驚きの一つです。特等、特1、1等、2等とランクが分かれていて、ランクが高い船室は上の方にありますが、フェリーで船底に車を積載するため船底の船室はありませんが2等はとにかく一番下なのです。他の上位ランクが個室風なのに比べ2等船室は大広間風で、昔のように何処に寝てもよい早い者勝ちの場所取りはさすがになくなりましたが、人間の寝れる範囲に通し番号が打ってあって、指定された自分の場所を確かめながら下毛布と上毛布を広げ、枕に上カバーを掛けて居場所を確保するのです。

 この航路は旅行会社の募集した四国遍路の旅に参加する九州地方の人々が、団体で乗り込んで中々賑やかでした。殆どに人は私と同じ60歳がらみの定年退職もしくは初老といった風格の人ばかりで、見ず知らずの人ながら気軽に話しかけてくるのです。「どちらまで」から始まる会話は身の上話や八十八ヵ所の話まで巾が広く、結構飽きずに話が延々と続くのです。

 私はこの航路に乗ると浴室に一番乗りで出かけます。小さい風呂ながら動く船の風呂に入れるとはまるで世界一周のクルージングを楽しむような贅沢なものです。シャンプーもボディソープも用意されて中々のものです。酒を辞めたため風呂上りに一杯はさすがになくなりましたが、約1時間前の乗船ですから午後9時55分発までには十分風呂を上がることが出来るのです。11時になると消灯し、朝4時には点灯されるその間の5時間が就寝なのですが、私のように旅なれていると10時には床に就き4時半まで眠るので7時間弱は睡眠時間を確保できるのです。

 でもいつも思うのですが、年金暮らしになると見栄や無駄のない暮しに徹底した方がはるかに気楽で得策なのです。格好をつけて特等室を取ったところで高い金を払って船室という檻の中に入るだけなのです。2等だと隣のおじさんやおばさんのいびきや会話が多少気になりますが、それでも人々の暮しの息遣いが見えてくるのです。今日もこうして新幹線や高速船のスピード旅では味わえない、スローゆえのゆったりした雰囲気が味わえるのですから嬉しいことです。

 朝5時、四国・愛媛・松山の港桟橋に降り立った時初めて、昨夜海の上にいた事を実感しました。

  「シルバーの 二割割引 烙印を 押された切符 記念に持って」

  「船中で 動くお風呂は いい湯だな のんびりスロー 気分最高」

  「一万で 二日間も 乗り放題 そんな旅する 老人横に」

  「どちらまで 会話始まる 船の中 思わぬ出会い ハガキひょっこり」

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