shin-1さんの日記

○人の口には戸は立てられれぬ

 田舎が嫌だという人に、「何故」と理由を聞くと殆どの人が「煩わしい」というのです。確かに田舎は親類縁者も多くて何かにつけて嫌だと思っても隣近所と付き合わなければならず、冠婚葬祭などは簡素になったとはいえかなり家計を圧迫するのです。「煩わしい」と答えた人に「どんなことが煩わしいか」尋ねれば、「うわさ話や陰口が多い」と実感するそうです。「なるほどな」とうなずきながら蔭口の火元を探してみました。驚くことにその火元は同じ人や場所だったりするのです。昔から風呂屋と散髪屋とお医者さんは人が良く集まる場所で、そこへは沢山の情報が持ち込まれます。あの人が病気で入院した。あの夫婦は仲が悪い、あの家では財産分けでもめている。あの人はあの人と不倫関係にあるらしいなどなど、まるで田舎の三面記事や週刊誌のように、よく話題が集まるのです。風呂屋や散髪屋や病院は守秘義務があって滅多のことは言えませんのでそこが火元ではなく、そこに集まった人がまるでインフルエンザの病原菌をまき散らすように言いふらすのです。言いふらす人は大体顔ぶれが決まっていて、「誰から聞いたか」芋づるの基を辿っていけばその人に出会うのです。

 その人に出会うと「あんた知っとるかな」とまず声をかけてきます。「何ですか」と尋ねたら「実は人から聞いた話だが」と出所を隠して話が始まるのです。そして自分の注釈を加えながら話をだんだん太くしてゆくのです。

 実は数年前私もその餌食に遭いました。健康診断で胆のうにポリープが見つかり、入院して摘出手術をしました。癒着していて少し手間取り回復が大幅に遅れたばかりか13キロも体重が減ったのです。「若松の進ちゃんはこないだ入院して胃の手術をしたそうだが、どうも余り良くないらしい。体重も減ってどうも私が思うに胃がんではないかと思われる。長くないかも知れない」という話が村中を駆け巡りました。退院してからしばらくすると、近所の人の目が少しおかしいように思えました。「胃だのは少々取ったところでまた回復しますから」とか、「気長に養生しなしよ」と、胆のうが胃になり、長野わずらいになっているのです。

 ある日のこと私はシーサイド公園に行きました。それまでは毎朝5時から3時間も掃除をしていた人間が、急に見えなくなり、見えた姿は体重の減った青瓢箪のような姿ですから、ある人が「若松さん、あんたガンの手術したそうですがその後どうですか」というのです。「私はがんの手術などしていません。胆のうを取ったのです。誰がガンだと言いましたか」と問い返すと、「みんなが言いよる」とお茶を濁しましたが、どうも火元はこの人に間違いないと思いました。私はその人に「本人にあんたガンだそうですねと聞くものではありませんよ」と釘を刺すと「すみません。ところであんたどこのガンですか?」と問い返してきたので、「はいきんガンで、まっすぐ死んでもいがんで死にます」とおどけて見せたら、すごすご退散しました。

 私はこの人のお陰で胃ガンにさせられ長くはないと言いふらされました。その私もまだ胃ガンになることもなく真っ直ぐ生きているのですから「人の口には戸は立てられる」としみじみ思いました。人の不幸がたまらなくうれしい人もいます。また隣に蔵が建ったら腹が立つ人もいます。せめて正しい情報を流したり、美徳を褒めあうような人になってほしいものです。

  「あんたガン いきなり言われ ひょっとして 自分疑う 半信半疑」

  「人の口 戸は立てられぬ だからこそ 日頃行い 行儀良くして」

  「火元誰 探して行けば 同じ人 やっぱりそうか 顔が浮かんで」

  「人のこと 気にする田舎 だから好き そう思わねば 生きては行けぬ」

 

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shin-1さんの日記

○腐葉土作りの準備作業

 昨日は冬にしてま珍しい穏やかな日でした。風邪で崩していた体調も随分復活して、年末年始を部屋の中で過ごさざるをえなかったうっぷんを晴らすため、人間牧場の冬作業の遅れを取り戻そうと、思い切って戸外へ出ました。それでも冬ですから体を動かさなければ底冷えがして、これで風邪をひいたら反対された妻に申し開きができないので、少し厚着をして出かけました。

 昨日の作業は田舎のオープンカーの荷台にベニヤ板で囲いを作りお目当ての枯葉を集める作業です。人間牧場へ通じる狭い山道には枯れ葉が吹き溜まりのようになっていて、すごい量が確保できるのです。山道ゆえ車の往来もなく、未知の真中へ車を止めてテミで集めて車の荷台に積み込むのですが面白いように集まりました。昨年は息子が手伝ってくれ随分助かったため、今朝手伝いを依頼しましたが、残念ながら孫が嘔吐下痢症とかで一人での作業となりました。それでも2時間ほどでトラック2台分の落ち葉を積み込み、昨年作って大活躍をした腐葉土集積場へ運びました。私の軽四トラックは4WDなのでスリップすることもなく畑の中に入って作業ができるため随分助かりました。

若松進一ブログ (トラックの荷台に積んだ落ち葉)

 私は茶目っ気があるのか、一度やりたかったことがあって、車の荷台に積んだ落ち葉の上に体ごと寝てみたいと思っていたので、恥も外聞もなく思い切って落ち葉のベットの上に横になりました。ふわふわの落ち葉は気持ちがよく、大の字になって寝転がりましたが、いやあ気持ちがいいものです。青い冬空を雲が西から東へ流れて行く姿を見ながら、ついウトウトしそうでした。

 遊び心もこれまでで、車の荷台から鍬で腐葉土づくりの箱の中へかき込みました。箱いっぱいの落ち葉を足で踏みこみ、前もって近所の人に米ぬかを2俵、園芸店で油粕を1俵購入していたので、それを表面にばらまきました。そして2年間寝かせている大洲市田処の亀本さんからいただいていた牛糞と、牛糞ペレットをばら撒き、その上に水をかけて作業を終えました。何日かすると発酵が始まるので、ビニールを被せて温度を取るようにすれば、いい腐葉土ができる計画です。ベニヤ板で囲っているだけの簡単な施設なので、2年くらいが限度のような気がするのです。これで遅れていた作業も一気に進んで、3月初旬には種芋を伏せれるようです。

若松進一ブログ(腐葉土置き場へ落ち葉を踏み込む)

 作業をしていると、人間牧場に水を貰っている西嶋さんのご主人がやってきました。昨年の春お父さんが亡くなっており、今日は一周忌の法要があるのでお墓の掃除に来られたとのことでした。時の立つのは早いもので一年があっという間に過ぎ去りました。この一年私は何をしてきたのだろうとふと思いました。

 西嶋さんのご主人は私より一つ年上です。聞けば年末にぎっくり腰になって一ヵ月も通院して仕事にならなかったようです。私の長引いた風邪といい確かに私たち年代ももう若くはないなと笑いながら話しましたが、忍び寄る高齢化の波も人事ではないようです。

 作業中もひっきりなしにズボンのポケットの携帯電話が鳴って、その都度作業の手を休めては対応しましたが、こんな僻地にいても便利な世の中になったものです。今年は人間牧場も2月には岩手から講師を招いて年輪塾ネットのオープンセミナーを開く予定だし、8月には愛媛大学農学部のカレッジを開く予定など、目白押しの予定が組まれています。さて今年も人間牧場にまた新しい出会いと進化が待ち構えていることでしょう。今年最初の作業を終えて、ホッと一息、咲き始めた梅や水仙の香りを楽しみながら家路を急ぎました。


  「遅れてた 作業一気に はかどって ホッと一息 これで安心」

  「ふわふわの 落ち葉ベットに 寝転んで 冬空行きし 雲の行方を」

  「牛の糞 二年経っても 腐らずに 役割ちゃんと 枯葉腐らす」

  「もう春が そこまで来てる 梅の花 水仙までも ほのか香りて」


 

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