○若者の一番欲しいものは携帯電話です
昨日松山へ行った帰り道で人身事故を起こしそうになりました。というのも青信号なので車を進めていると、相手は私の車を追い抜くように確認もせず横断歩道を自転車で右折して横切るのです。とっさに「危ない」と思い急ブレーキを踏みました。幸い後続の車もいなくて追突事故にはならなかったし、その高校生もヒヤッとしたのでしょうか、渡ってから自転車を止めましたが、さも「私は横断歩道を通っているのに、車を運転しているおじさんが悪い」とばかりにねらみつけて走り去りました。どうやらその高校生は自転車に乗りながら携帯電話でメールをしていたようなのです。歩きながらならまだ理解できますが、自転車に乗って携帯電話でメールを打つのは危険極まりないと思い、私は追いかけてその高校生の自転車を停車させ、「君は横断歩道といいながら車の状態も見ずに車を追い越し、直前を右折し渡った」「自転車に乗って携帯でメールするとは何事か」「こちらが急ブレーキをかけて事なきを得たのに知らんふりで、あいさつもせずに立ち去るとは何事か」「君は何処の学校の生徒か」「名前は」と、矢継ぎ早に、叱りとも意見とも取れる言葉を連ねました。最初はうそぶいて「何やこのおっさん」という態度でしたが、事の重大さに気付いたのかその後低姿勢になって「おっしゃるとおり携帯でメールをしながら走っていました。急に用件を思い出し直進するはずが右折してしまいました。私の前の信号は青だったので確認しないまま右折してしまいました。すみませんでした」とやっと断るのです。
「私も過日かかってきた携帯電話を聞きながら運転し、パトカーに捕まった経験があるので人の事をどうのこうの言える立場ではないが」と自分自身の心情を吐露しながら「君はまだ若い。将来も長い、だから気をつけなさい」と話し、握手をしてお互い笑顔で分かれました。
その後高校生の心がどう変容したかは知る由もありませんが、あのままの通り過ぎないでよかったとしみじみ思うお節介なおじさんを振り返っているのです。
現代の若者にとって一番欲しい持ち物は、お金でも友だちでも自分の部屋でもなく、携帯電話であるという事実を考えれば、若者の行動はよく理解できます。でもお金や自分の部屋はさて置いて、友だちより携帯電話が大切なものとは驚く時代になりました。隣に友だちがいても携帯電話の向こうを絶えず意識して暮す現代社会はまさに人間不信の何ものでもないのです。人間とは人の間と書くし、時間は時の間、空間は空の間です。人間の間の取り方がどうも間違っているように思えてなりません。
若者と携帯電話の関係を考えているうち、どうやら私たち大人も若者と同じように携帯電話を使っている事に気がつきました。どうやら日本人は仮装・空想と訳すバーチャルの世界に迷い込んでしまっているようです。
「友よりも 欲しい持ち物 携帯と 答えるヤング 私は分らぬ」
「追いかけて 注意するよな お人よし 反発覚悟 止むに止まれず」
「携帯を 使ってパトカー 捕まった そんな大人が 経験語る」
「若者に 自分の息子 重ねつつ 必死な自分 どこか可笑しく」