○海の資料館「海舟館」の改修工事
わが家の庭の隅に設置している、海の資料館「海舟館」の改修工事が行われています。91歳になる親父はよくよく家をいらうことが好きな人間で、暇さえあれば金づちと鋸を持って日曜大工よろしく家の周りのこまごましたところを改造したり修理したりするのです。その姿勢は炬燵の番をするような91歳になっても未だ衰えず、今回も十日ほど前に相談がありました。「倉庫を改造して作った海の資料館海舟館の裏手の土台が少しおかしいので土木業者に頼んで直してもらう」というのです。「止めた方がいい」というと機嫌が悪いので、いつものことながらしぶしぶ同意するのですが、土台の修理となると柱や外壁も直さなければならず、結局は近所で出入りの大工さんに頼んで直してもらうことになったのです。その日から親父はこの寒い季節だというのに外に出て片づけたり医師を動かしたりしながら工事に備えました。毎年このころになると一度は風邪をひく親父が今年は風邪をひくこともなく大張りきりで元気な姿を見るとやはり人間は生きがいを持って生きることだと実感するのです。
先日親父が私に「工事の代金を払わなければならないので、郵便局へ行って貯金を下ろしてきてくれと印鑑と通帳を渡されました。これまでは目も薄く耳も遠くなったため銀行や郵便局へ行くのが煩わしいため、何かにつけて近所にし住む姉に頼んでいましたが、今は長男である私に大事な貯金を引き降ろす作業を頼むのです。
50万円以上を下ろすのには手続きが面倒臭いので、免許証を持って行って代理人であることを証明し、49万円を下ろしてきました。土木業者と大工さん、それに近々購入予定の電動時点所の代金なのです。年金で暮らしているため親父の通帳はそんなに多くありませんが、身体障害者のため障害者年金なので多少上乗せした金額が振り込まれているようです。
まあ自分の金で自分が考えたことをやる自己完結、自己責任ですからとやかく目くじらを立てることもあるまいと傍観していますが、まあ次から次へとやることを考えるものだと、妻も呆れて開いた口がふさがらないようです。
これも先日お話ですが、電動自転車を買いたいからカタログを貰ってくるよう頼まれ、10万円もする電動自転車を注文することになったのです。妻はもう自転車は危ないからと大反対しましたが、一向に止める意思がないのです。親父の義理の兄が94歳まで自転車に乗っていたことを例に出しながら、まだ5年は乗れると強気な姿勢なのです。
昨日注文していた自転車屋さんから新車が届いたので取りに来るよう連絡がありました。9万3千円の自転車です。親父が乗らなくなったら私が乗ればいいのですが、それにしても老いてますます盛んな親父には呆れるばかりです。妻が「お父さん、おじいちゃんよりは長生きしてね」と意味深長にいうのも分かるような気がするのです。
親父の老いと同じように私たち夫婦にも老いは次第に忍び寄ってきていますが、せめて生き方だけでも親父の真似をしたいと思って生きている今日この頃です。
今朝早く隠居に住む親父がわが家に来て「自転車はいつ取りに行くのか」といわれました。まるで始めて自転車を買ってもらう子どものように目を輝かせていました。
「九十を 越えても新た 事始め それが元気の 秘訣だという」
「自転車の カタログ小文字 虫眼鏡 これがいいぞと 息子指示する」
「通帳と 印鑑渡し 五十万 引き出せ息子 頼んだと」
「俺よりも 元気な親父 なんぼまで 生きるつもりか 妻も呆れて」