〇天草の収穫と始まった晒し作業
毎年この時期の大潮になると磯に出て、天草を取ります。両親が漁師をしていたのでわが家では、この作業は子どもの仕事でした。故にこの歳になっても何となく血が騒ぎ始め、日めくりカレンダーの新月や満月を頭に入れ、今年も旧暦4月16日と5月16日が重なる今週の月曜日、1時間ほど磯に出て天草を摘み取り持ち帰りました。
大きなポリ容器に水を張り、摘み取ったばかりの天草を雑藻や貝殻片を丁寧に取りながら揉み洗いし、専用のサナに広げて庭に干しました。これからは朝の日課として干した天草をポリ容器で水洗いし、同じように乾燥を繰り返すのです。やがて黄金色の天草は徐々に白さを増し、晒されて白髪のようになれば、ビニ袋に入れて出来上がりです。
天草は寒天の原料ですが、わが家ではこの天草を鍋で煮たてて酢を入れて混ぜ、専用の布袋で濾します。その汁にオレンジジュースと砂糖を加え、ミカンやパインといった缶詰の果物を並べたパレット上に流し込み、冷えて固まれば冷蔵庫で冷やして、天草ゼリーが出来上がるのです。のど越しも良く、トコロテンとともに初夏の風物といったところです。
毎朝の晒し作業の機関中は時折雨が降りますが、ワカメやヒジキのように濡れると困る海藻と違い、濡れてもむしろ晒し作業には好都合なので、お天気を気にせずに済むので大助かりです。庭に広げて干した天草の香りを嗅ぐと、なぜか少年の頃の思い出が蘇ります。
「板壁に 吊るした日めくり カレンダー 満月の頃 そろそろ天草」
「磯に出て 岩に生えたる 天草を 摘み取り丁寧 水洗いする」
「天草を サナに並べて 庭に干す 磯の香りが どこか懐かし」
「1ヶ月 毎朝天草 洗い干す 単純作業を 繰り返しつつ」