○キヨスクというお店
講演等の旅が近づくと必ずやらねばならないことがあります。それはどういう乗り物で行くか、そして宿はどの程度にするかです。私の場合は先方がチケットを手配してくれる場合を除いて、貧乏懐の癖がついているのか若い頃から「安い」という方法を探します。例えば東京へ行く場合も飛行機とバスでは倍半分ですから、少々時間がかかっても深夜夜行バスを選びます。こんな便利になった「速い」時代にそんなみみっちい旅は止めろと妻にも言われますが、私としては何故かそれが好きなのです。「安さ」と「速さ」は反比例の理論のように感じますが、考えてみれば安い料金で長時間乗り物に乗れるのですからこれほど得なことはありません。最近は出張旅費は実費支給ですから、半券の提出が求められることが多いのですが、相手も喜ぶ破格な安い旅費の請求に戸惑う姿もあって結構楽しいものです。
普通は伊予鉄観光さんに知人がいてキップの手配は全てお任せしているのですが、機構改革とかでその知人が別の場所へ異動したため、久しぶりにJR松山駅の窓口へバスのキップを買い求めに行きました。時代の進歩著しい中で、松山駅は愛媛県の玄関口にも関わらず余り変化のない、いわば時代遅れな駅のような気がします。かつて九州の門司駅へ行ったことがありますが、門司駅ぐらい時代遅れになると一周遅れのトップランナーになって、レトロ調で懐かしさや古さが旅情を誘うのですが、何となく時代遅れ、何となく無造作で中途半端な感じがしました。
駅の構内には昔鉄道弘済会と呼ばれたお店があって、今はキヨスクという呼び名で知られています。JRに売店が出来たのは旧国鉄時代の昭和7年だそうです。東京の上野駅と東京駅構内に店舗が作られましたがその後全国に広がりました。鉄道弘済会という名前を覚えている人もいるでしょうが、その名前を覚えている人は私のように賞味期限の切れかけた人間で、鉄道弘済会が創立40周年を記念して昭和48年に親しみやすい名前としてキヨスクという愛称をつけました。
キオスクというのは英語ですが、語源はトルコ語の「あずまや」を意味する「キウシュク」でさらに語源を辿ればペルシャ語で宮殿や別荘の「コーシュク」へと行き着きます。このキヨスクは「駅の小さなお店」「駅や街頭の新聞雑誌売り場」として国際的に使われているいわばパクリです。本来はキオスクと発音するのですが、キヨスクは「気安く」「清く」などを連想する意味も込められているそうです。
昭和62年に国鉄が民営分社化されたのを機にキヨスクもJRと同じで北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州の6つに分社化され現在に至っているそうです。最近は駅の周りにもキヨスク風のコンビニが沢山出来て、キヨスクの利用も段々減っているのだそうですが、キヨスクで駅弁を買って列車の中から外の景色を見ながら食べる旅情もまた格別な感じがします。キヨスクのの駅弁やはりその土地の香りがして日本全国オール同じの画一を感じさせない嬉しいものです。
「キヨスクの 店のおばさん 顔見知り 土地の言葉で 客に一言」
「はよはよと せかされ生きる 今だから あえてのんびり スローな旅も」
「キヨスクの 語源辿れば トルコ語と 聞いた話を ブログ書き込む」
「車しか 乗らない普段 暮らしにて 駅は何故か 懐かし思い」