shin-1さんの日記

○雨の中の来訪者

 約束の5時きっかりに電話が鳴りました。「お約束の時間になっても来ないのですが、あなたは今どちらにいますか」。「はい私は下灘のコミセン前の駐車場にいますが、あなたこそどちらにいますか」。「はい私は双海町役場の前にいます」。一瞬しもたと思い記憶の糸を手繰り寄せました。私は確かに下灘のコミセンと言ったつもり、相手も双海町役場前と聞いたつもりの勘違いでした。間違いに気付いたのと携帯電話のお陰で約10分の遅れで二人の女性に再会しました。「お久しぶりです」「お元気ですか」そんな会話もそこそこに私の軽四の車に二人を乗せ、例によって下浜のトンネルを通る近道坂道曲がり道を一気に走りあがりました。夕闇迫る、しかも霧雨の中での走行に、まるで私の腕をつかまんばかりに「大丈夫ですか」とか、「私にはこの道は無理だわ」なんて会話もそこそこに人間牧場到着です。

普通の日だと夕日の綺麗な頃でしょうが、昼前から降り出した雨は本降りとなり視界は悪く、一昨日の写真に写った場所と同じとは思えない姿なのです。でも初めて来た二人は五右衛門風呂をまず見学し、風呂釜の中へ入って写真を撮ったりで相当気に入ったようでした。水平線の家に上がり込んでも興味津々、ロフト専用の収納階段には登るわ戸棚は開けるわ、やれスライド窓を開けて見せてと矢継ぎ早の見学でした。

 あいにくまだ座布団が用意されていないので魚梁瀬杉のテーブルを囲んで毛布を敷いて座り、それから約一時間、3人で雑談にふけりました。女性とはこうも気がつくものか、女性にも色々な人がいるなと思わせる2人の行動を観察しながら・・・・・・・。

 一人の女性は家が家具屋とか、東南アジアの雑貨も扱っているとあって土産代わりに持参したのは花器でした。新聞紙の包装を解き渋みのある花器を取り出すと、庭先に出て野の花を一輪摘んで来て中のコップに水を張り花を活けたのです。魚梁瀬杉のテーブルはまるで今までとは変わった雰囲気に生まれ変わりました。さすが酒蔵元のデザインを担当しながら家具屋を営んでいるだけのことはあるなと思わせる女性らしい手際よさです。

 もう一人の女性はバッグから折りたたんだ二枚のコピー用紙を取り出しそれぞれに配ってくれました。開けてみると現代詩が書かれていました。彼女はご主人亡き後家業の文房具屋を兼ねた書店を経営していますが、詩が好きイベントが好きで、文化協会のイベントの度に司会などを進んで行う明るい人です。今回の人間牧場訪問も彼女の子育てに関する心情吐露の長い手紙が私に届いたことからスタートしたのです。

 息子さんの悩みはかなり深刻なのですが、彼女の言葉は笑って話すものですから左程には聞えませんでした。でも時おり言葉に詰まる姿からは胸のつかえのようなものを感じました。亡くなった女性詩人茨城紀子の生前に書いた生前葬の手紙は、彼女は「大好きだから」と紹介してくれましたが、心を代弁しているようにも読み取れました。人それぞれ色々な悩みをしょって生きているものなのだということを感じさせる出会いでした。

 海沿いのおしゃれなレストランで食事をし、雨の中をやって来て雨の中へと去って行った二人の女性の影を追いながら、わが妻を思いました。最近体が不調のようで、今日は仕事が終わると整体へ行くと言ってました。帰ってみると孫と娘がやって来ていて妻はその対応に追われていました。体は大丈夫かなと思いつつ食事のテーブルにつきました。

  「花もなし 女性花器を 携えて 野辺花一輪 そっと沿え活け」

  「コピーした 現代詩読む 女子目に 薄っすら涙 子育て悩み」

  「女性にも 色々タイプ ありますね この歳なると 鋭く観察」

  「雨の中 人間牧場 やって来た 二人の女性 眺望見せねば」

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shin-1さんの日記

○今日は何曜日?

 退職をして一年が経ちましたが最近は曜日の感覚がまるでなくても生きていけるため、毎朝「今日は何曜日だろう」と自分自身に問いかけるのです。妻にそのことを話すと、「まあ羨ましい。私なんか日曜日だけが休みだから、日曜日の来るのを月曜日から後何日と指折り数えて待っているのに」と言われました。先日も兵庫県尼崎からお客様を迎えるのに、曜日を勘違いして結構慌ててしまいました。私は現職の頃も土日のないまるで月月火水木金金のような暮らしをしていましたので今とそれ程変わったとは意識していません。でもお勤めをしていた時とは随分違うようです。

 最近は土曜日でも学校が休みだし、特に街の中の学校の正門は年中門扉を閉ざしているので、何時が休みなのか登校日なのかさえも分らない始末です。

 私の暮らしで曜日を意識するのはゴミを出す月水金、大学の講義日の水曜日、集会予定の多い土曜日などですが、妻の休日もやはり意識しますし、週末になると孫がやって来るので意識せざるを得ません。

かつて私は父が「今日は何曜日か」と尋ねるのを聞いて「何て羨ましい」と思ったものですが、私がその年齢になろうとは夢にも思っていませんでした。「あなたの仕事は」と聞かれ、「サンデー毎日(毎日が休み)」と冗談を言って大笑いをした一年前のジョークが懐かしく思い出されます。

 今日は土曜日、といっても何にも関係のないことですが、妻に弁当を作ってもらい、熱いお茶を魔法瓶に入れて朝早くから人間牧場の農作業に出かけました。出掛けに隣のおじさんにばったり会い、「何処へ行くのか」尋ねられたので訳を話すと、「雨でも降らなければよいが」と笑われました。何とその予言がピタリ当って、昼前から雨が降り始めました。でも朝が早かった分作業がはかどり、ジャガイモ畑の草削りを兼ねた根寄せと肥料やりは何とか済ませ、周辺を清掃したゴミに火をつけて燃やしました。またススキの株も夏から秋の原風景づくりに一役かってくれていましたが、そろそろ新しい葉っぱと交換したくて、株だけ残して鎌で切り落とし切ったものを焼却処分しほっとしました。この雨で肥料の効きもいいだろうと思います。そうだ今日は半ドンだから昼からは休もうとストーブに薪を入れ寝椅子にゴロリと横たわって本を読んでいるとついつい眠たくなって昼寝を楽しんでしまいました。今夕は二人の女性が人間牧場にやって来ます。野の花でも活けようと思ったのですが、あいにく花瓶が見つからず、迎えに下りた時に花瓶を用意したいと思っています。

 

? 写真がまずくて済みません。実はこの写真は人間牧場に今にも咲かんとする鬼アザミの花なんです。余りの美しい姿についパチリとデジカメを向けてシャッターを押してしまいました。バックが緑の同色なのでさえませんが悪しからず。アザミは雑草で痛いイガを持っていますが、綺麗な花にはトゲがあるの諺どおり実に美しい花を見せてくれます。鎌で刈るのは勿体無いと思い畑の隅に残しています。

 いい天気だと来客の女性に自慢してやりたいところですが、あいにく雨で残念でなりません。

  「土曜日の 仕事をを終えて やって来る サンデー毎日 俺はいつでも」

  「半ドンと 言っても今は 通じない 土曜の昼から ワクワクしたっけ」

  「野の花を 楽しむ術は デジカメで 一年かけて 小まめにシャッター」

  「今日何曜 聞いた相手が悪かった 親父も同じ サンデー毎日」


 


 

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shin-1さんの日記

○同じ課長が部長と主幹に

 合併とは不思議なもので、昨日まで小さな町役場の課長だった人が、合併によって主幹に格下げされたり部長に昇格したり、様々な影響が出ています。しかしその殆どが何の根拠もなくといえば御幣がありますが、化学的な根拠もなく決められてゆくのですからおかしな話です。

 昨日そんな人事を象徴するような二人の人に偶然にも一緒に会いました。部長になった人は市役所の市長や助役の視角や視線を意識するのか常にその中にいるような位置に陣取って、さも「私は中枢にます」と言わんばかりの態度で、昨日まで同じ課長だった人を連れ歩き、名刺を配り膜っているのです。私はその姿が滑稽に見えました。人の値打ちや権威は周りの人が決めるのに、まるで天下を取ったような雰囲気です。勿論私に対しては、私の苦言が怖いのか礼節を尽くしてくれましたが、どう見ても異常としか言いようのない出世なのです。

 一方部長になった前述の彼とは対照的に合併によって誕生した市では、役職の枠が少ないことから旧町の課長から主幹に格下げされた人は、「おい元気か」の声をかけるのが気の毒なような雰囲気で返ってくる言葉にも覇気がなく、私の「人間牧場主若松進一」と書いた名刺を差し出すのに、「名刺など持ち合わせていない」といいながら、私の名刺をおもむろにポケットにしまいました。

 私の目から見ても、同じ年齢なのに一方は白いシーツのかかった椅子や部屋が与えられ、一方は昨日まで「課長さん」と呼ばれてた人が他市町村の課長だった人の部下となって部屋の隅の名もなき椅子に座って息を凝らしたように実務をこなして行くのです。二人とも年齢は一緒で後一年したら定年を迎えますが、前や元の後ろには永久に部長と主幹という肩書きだけが一人歩きするのです。私は年功序列をいいとは言いません。でもこうした人事の妙を見るにつけ、何処が二人の役職の分かれ道になったのか理解に苦しみ、むしろ年功序列も日本の風土には合っている部分もあるのではと思ったりもしました。帰り際、主幹格下げのその人は「若松さん、近いうちに人間牧場へ行かせて下さい。積もる話もありますので」と声を掛け、握手をして分かれました。私は「頑張れよ」と声を掛け「主幹になったからといって給料が下がるわけではないのだから」と笑いを誘いました。

 今回の平成の合併はこんな辻褄の合わない辻褄合わせが沢山ありました。合併時の異動、合併後の人事交流と称する異動、そして今春の異動と早い役所は3回も人事をやりました。丸印のついた人は栄転で新聞の異動便りに華々しく写真入で乗ったりします。一方左遷や降格とおぼしき人は活字も小さく、聞いたこともないような2行にも渡る長ったらしい役職を貰っています。同じ市役所の人事とは思えないほど広域になったため海辺の人は県境近くの山に登り、そこから海辺へと下りて新しい年度が始まりました。人生色々あるものです。でも忘れてならないのは、たとえどんな異動であれプロとしてしっかりと仕事をしてもらいたいものです。

  「昨日まで 同じ課長の 人二人 一方部長で 一方主幹」

  「悪いこと したのか住民 聞くという 課長主幹に 降格されて」

  「前や元 辞めればそんな 肩書きは 糞を食らうが 如きことなり」

  「新部長 急にお偉い 仕草する 昔知ってる 滑稽止めろ」  



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