shin-1さんの日記

○花見の乱れ

 今年の桜は実に長持ちです。普通の年だと一雨一風で散ってしまうのに、朝晩の冷え込みか満開宣言が出てしばらく経つというのにまだ見ごろで、あちこちでは花見を楽しむ人の群れが出来ているようです。昨日私たちの町の桜の名所八景山に登ってみましたが、田舎でもそこここにブル-シートを敷いて小さな酒盛りが開かれていました。そんな中見かけぬ集団が花見をしていました。明らかにルール違反の様子です。何とさくらの樹の下にこともあろうにコンクリートブロックを組んで焚き火をし、その上に金網を乗せ焼肉を焼いているではありませんか。満開の桜の樹は焼肉の煙で燻されているようでした。さらに自家発電機を持ち込みカラオケとボンボリまで付ける周到な準備です。察するに夜まで続けるつもりなのでしょう。

 こんな花見を見たらあなただったらどうするでしょう。多勢に無勢、多分見て見ぬふりをしながらすごすごと去ってゆくことでしょう。私は意を決して酒で盛り上がっている集団に分け入って行きました。「すみませんが、皆さんの責任者はどなたですか」と尋ねると、「おおわしじゃが、何か用か」と顔を赤くして立ち上がりました。「ちょっといいですか」と少し離れた場所へ連れ出して、「お楽しみのところ恐縮ですが、この公園では火を焚くことは禁じられております。また自家発電でカラオケなど他の花見客の迷惑になるので止めてください」と言うと、「あんた誰ぞな。何の権利があってそんなこと言うんぞ」と不快をあらわにして言うのです。「私は先日までここの管理をしていた元役場の職員ですが、公園はみんなのものです。ルールを守ってもらわないと困ります」とまくし立てました。側で見ていたグループの物分りのよさそうな中年女性がやってきて、「まことに済みません」と代表の人の手を引っ張るのです。そして、彼女は賑やかな席に割って入り「みなさんにお知らせします。この公園は焚き火は禁止だそうです。自家発電のカラオケも樹に取り付けたボンボリも除けてください。これからはマナーを守って桜の花見をします。いいですね」と仕切ってしまいました。

 花見に水を差した私、最初は息巻いたのに彼女の一言でしゅんとなった代表、私のはなしを理解してくれた物分りのいい中年女性、花見に水を射された烏合の衆など、それぞれの思いが交錯する結果となった花見を思い出しながら、日本人の花見のあり方に疑問を感じた一日でした。

 花を見てお茶をたしなむもよし、花を愛でながら酒を飲むもよし、はたまた花を季題や季語に一句詠むもよし、花の楽しみ方は人それぞれですが、せめて花の気持ちになることや他人のことを思いやるそんな日本人でありたいと思いました。先日原爆の後遺症を生き抜いた桜を増やそうと植えた広島の桜が何ものかによって折られる被害が出たそうです。常識では考えられない目に余る行動に心を痛めました。桜の花は長くても20日間、せめて散り行く桜の花に思いを寄せるような優しい日本人でありたいものです。

  「花見より 酒や焼肉 目当てでは せっかく咲いた 桜かわいそう」

  「悪いこと 悪いと諭す 勇気あり 何事もなく 済んでよかった」

  「あのおばさん 機を見て敏なり さすがだな 何処の誰だか 知る由もなし」

  「六十年 生きてて桜 これ程に 見たの初めて 少し余裕が」

[ この記事をシェアする ]