shin-1さんの日記

投稿者: | 2006年4月15日

○解纜の季節

 「解纜」と書いたこの文字は何と読むかご存知ですか。はいこれは「かいらん」と読みます。ではその「意味は」と尋ねられると答える人は読める人よりもぐっと減って殆ど分らないのです。国語は大好きな私でもこの言葉の意味は水産高校へ行っていなかったら分らなかったかも知れません。ちなみにこの文字をブログに書きこもうと試みましたが、解は出ても纜は「らん」という読み方では出てこないのです。

 この文字を習ったのは高校3年生の時の秋田忠俊という先生からでした。間もなく愛媛丸という実習船で遠洋航海に出発するという頃、この言葉を習いこの言葉の意味を知りました。もう45年も前の話です。先生は自分の恋人にこの言葉を書いた手紙を送るよう勧めました。今の高校生のように携帯やEメールのなかった時代ですから高校3年生の私たちにとって手紙はとりわけ大切な告白手段でしたが、恋人のいない私は数人の中学時代の女子同級生にこの文字を書いてハガキを出しました。どういう訳か数打った鉄砲の弾が一人の女性に受け止められ、返信の便りが下宿に届いたのです。その時の便りは今でも覚えていますが、「間もなく私は練習船愛媛丸で珊瑚海へと解纜します。正月は赤道直下で迎えるでしょう。帰ったらマグロやサメと格闘した楽しい話や南十字星の話をたっぷり話します」なんてかっこいい話を書きました。

 解纜は出航、船出、つまり纜は「ともづな」という意味なのです。

 私たちの船は基地となっていた神奈川県三浦三崎漁港を出航して珊瑚海へただひたすら南下を続けました。ニューヘブリデスエスピリッツサント島というイギリス領の島に寄港したり、過酷な延縄漁にも耐えて3ヶ月半ぶりに解纜の港へ寄港、纜を再び結んだのでした。

 解纜という言葉を書いた手紙で心を開いたその女性とは何回かの文通を繰り返しましたが、時の流れの中で忘れ去り先日同級会で思いもかけずその女性と会い、その話が彼女の口から話されました。彼女の話によると、解纜という文字は何と読んでよいか辞書を引いてもさっぱり分らなかったそうですが、恩師に尋ねてその意味を知ったそうです。その時は「格好いい言葉だ」と思いあなたに憧れました」と言うのです。「今だから告白するけど」という注釈をいただいはその女性も、数年前ご主人をガンでなくされ苦労をしましたと話されました。

 61年間生きてきて、高校生の時のあの一瞬に教師から習った解纜という言葉をこれまた一瞬思い出しました。その言葉の手紙を書いた青春時代の思い出は、私にとっても私に便りをくれたその人にとっても、もう遠い彼方の思い出です。ブログに紹介するほどのことではありませんが、ひょっとしたらあの手紙のやり取りはラブレターだったのかもしれないとひとりニンマリして書いていたら、横で妻が「お父さん、一人で何ニヤニヤしているの」と声を掛けられ、ハッとわれに帰りました。「うーん、いい夢見てたのになあ」

 春は解纜の季節、人生の船出をした人も多いのではないかと思います。

  「解纜の 訳も分からず 文を出す 届いた返事 昔懐かし」

  「俺だって レターくらいは 来たもんだ もてない男 今頃強気」

  「ニヤニヤと しながら昔 思い出す 妻の一言 夢を砕いて」

  「久しぶり 会ったその人 今だから 言われて顔を 赤くしながら」

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