人間牧場

〇サツマイモを掘らない収穫祭

 一週間前、人間牧場へイノシシが現れました。といってもイノシシの姿を見た訳ではないのでイノシシであるかどうかは定かではなく、推測の域を脱しませんが、その仕業の痕跡を見れば多分イノシシに違いないのです。私たちはイノシシと人間のせめぎ合いを思い巡らせながら、侵入を防ぐために魚網を張り、威嚇するため音のする空き缶を吊り下げ、人間の姿に見える案山子を4体も作って、これでもかと思えるほどの予防線を張っていました。ここ5年の成果にすっかり酔い知れ、私たちの智恵はイノシシの智恵を超えたと過信していたのです。しかし悪智恵の働くイノシシたちは、私たちのこうした浅はかな智恵をあざ笑うように、春のつる植え、夏の草刈り・草引きする姿を遠目・近目で眺めながら、実りのころの千載一遇のチャンスをうかがっていたようです。サメでも生け捕れそうな、畑を囲むように張り巡らせた、頑丈な網を越えることも破ることもないと思っていたのに、こともあろうかイノシシたちはまるでスカートの裾を持ち上げるようにして芋畑に侵入したのです。

芋畑の片付け作業

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 畑の中に入ればしめたもので、イノシシたちは茂った芋つるを踏み倒し、片っ端から鼻と手足で、まるで耕運機で耕したように掘り返し、一つの芋も残さずに腹の中へしまい込み去っていったようです。この様子を見て今年の収穫祭は止めようかとも思いましたが、収穫祭の通知を子どもたちに出していることもあって、失敗経験やこの姿を見せることも大事だということで、昨日の収穫祭となりました。
 午前9時に下灘コミセン前に集まった子どもたちにはこの事実を知らせぬまま、人間牧場まで片道約40分の山道をいつもどおり歩いて来ました。ウッドデッキでの開会式で実行委員長である私が、イノシシの被害でサツマイモが全滅したことを告げると、子どもたちは一応に感嘆の声を上げました。子どもたちを畑の周りに集めて、案山子が倒れたり、掘り返された畑の無残な姿を見せてやりました。そしてみんなで張り巡らせた網や杭、空き缶等を消沈の面持ちのみんなで協力して片付けました。

ウッドデッキでの食事風景

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その間私とスタッフの皆さんは、こんなこともあろうかと私の家の横の家庭菜園で予備として植え、先日公民館主事の赤石さんと二人で掘り上げていた、キャリー2杯分のサツマイモをセイロで蒸かしたり、天ぷらにしたり、また芋を入れた芋ご飯を炊いたり大忙しの時を過ごしました。また近所に住む岡田さんから分けていただいたイノシシの肉を入れた猪鍋を炊きました。ギノー味噌さんからいただいた合わせ味噌を使って具沢山の猪鍋を二つも作りました。みんなで手分けして器に盛り付けかなり贅沢な昼食会となりました。子どもたちの殆んどは猪鍋は初めてとあって、芋ご飯も二釜、猪鍋も二鍋用意しましたが殆んど食べ切ってくれました。
 昨日の天気予報は50㌫雨でしたが、雨に合うこともなくどうにか予定したプログラムを午後2時までに消化することができました。下山してコミセンで閉会しましたが、サツマイモを掘れなかった今年の収穫祭は、ほろ苦い結果となりました。ジャンケンゲームで特製の人間牧場蜂蜜もお裾分けしてやりました。前夜から泊まっていた三重県の杉谷さんも支援員の富田さんも一緒に参加して手伝ってくれました。

 

2011年10月17日付愛媛新聞朝刊10面地方版に掲載された記事

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「サツマイモ イノシシ食われ ほろ苦い 収穫祭を 何とか乗り切る」

  「猪鍋に 舌鼓打つ 子どもたち 遠くでシシが 笑って見てる?」

  「芋飯も 今はご馳走 俺などは 昔の記憶 頭かすめて」

  「失敗は 次の智恵産む きっかけに これも学習 話して聞かせ」

 

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