〇心を磨く100の智恵・その7「過去の過ちを根に持たない」
【人の小さな失敗を責めたてない。人の秘め事を暴かない。人の過去の悪事を蒸し返さない。この三つを守ることで徳が備わり、人から恨みを買うこともない】
人は多かれ少なかれ過ちを犯しながら、それを反省したり肥やしにしたりしながら生きてゆくものです。過ちを犯そうと思って過ちを犯す人は殆んどいないし、犯した過ちを早く忘れたいと思っているのに、何度も何度も掘り繰り返されたら、掘り繰り返した人に対してよからぬ印象を抱いて、人間関係を損ねてしまうのです。
私は青年時代に一度だけ、スイカ泥棒をしました。仲間と酒を飲んで酔った挙句悪ふざけて、近所の畑へ入りスイカを2個盗んだのです。盗んだスイカを海岸に持って行き、まだ半熟で熟れていないスイカを棒切れで叩き割って大いに盛り上がりました。
明くる日酔いから冷めた私たちは、「赤信号みんなで渡れば怖くない」の群集心理で、とんでもない事をしたことに気付きましたが時既に遅しで、畑の持ち主がえらい落胆をしている話を聞きました。その夜みんなで集まり何とかしないと警察沙汰になったら大変と、ポケットの小銭を拾い集め、近所の八百屋でスイカを2個買い、スイカ畑へそっと置いて帰りました。
さあそのことが明くる日から近所のちょっとした話題になり、スイカ泥棒は誰だったのか、別のスイカを畑へ置いたのは誰なのか、田舎ゆえ噂話は大いに盛り上がりました。忘れたいと思えば思うほどスイカの話は口伝えに広がりましたが、いつの間にか夏の夢物語はその後何事もなかったように終息したのです。
今はその畑も作っていた老夫婦が天国へ召されたため荒れ果てていますが、その畑のそばを通る度にわが心が傷むのです。もう40年も前の出来事ですが、今も仲間内で酒を飲むとヒソヒソ話でスイカ泥棒騒ぎのことが語られますが、この話を素材にして後に青年団の演劇が上演されました。私はスイカ泥棒の首謀者扱いされて演劇の台本に出され上演されたのですから、たまったものではありません。
仲間しか知らない秘め事を暴かれたり、小さな失敗をいつまでも責めたてられたり、蒸し返されると穴があったら入りたいような心境になり、そのことをいつまでも覚えて語る人を、できるだけ避けるようになるものです。一事が万事過ちを根に持たないことで得は備わり、人から恨まれることもないのです。
「若い頃 起こした過去の 過ちは 忘れたいけど 忘れられない」
「スイカ取り 買ったスイカを 元戻す 馬鹿な考え 今も可笑しい」
「悪ふざけ 悪気はないと いいつつも 悪いことには 変わりないから」
「蒸し返し 暴いて責める ことすれば 人に恨みを 買う気をつけて」