○お酒をお土産に貰うのですが
私は全国を旅している関係上行く先々でお土産にお酒類をいただきます。日本酒、焼酎、ワインなど全国には地酒と称するものが数えきれないほどあるようで、その土地の水と原料を使っているだけにお菓子と並んでお酒はやはりお土産として最適なのでしょう。最近は地酒を差し上げても重くて大変だろうとわざわざ宅配便で送ってくれる所もあって恐縮します。
私に頂いたお酒はもっぱら私の家にやって来るお客に振舞い酒として使われますが、酒好きの友人は私が酒を飲まないことやわが家にそうしたお酒が転がっていることを知っているようで、時々やってきては寝酒用に持って帰るのです。お土産に頂いたものの中には中々手に入らない名品もあるようで、酒飲みはそこいらをちゃんと知っているのです。
私たちまちづくり人の話題が満載な雑誌に「舞たうn」というのがあります。えひめ地域政策研究センターが発行している機関紙なのですが、今月号は「酒文化と地域とのかかわり」が特集で組まれています。普通お酒は飲むもので記事にはなりにくいのでしょう、今まで88号も発行を重ねているのに酒などというテーマはありませんでしたし、地域づくりの現場でも三人寄れば酒の話しなのに何故か取り上げられることはありませんでした。そういう意味から言うと大胆で、表紙の挿絵を見た瞬間懐かしく読んでみたい気持ちになりました。
編集子の兵頭さんが特集への想いを表紙裏に述べているように、「酒は人生の慶事になくてはならないもので、もともと御神酒として神に祀られ、やがて祭事の折に人々に飲まれるようになった。産業の一形態となった現在でも、地域やその文化とかかわりが深い。かつては一村一蔵といわれ、まちなみあるところに酒蔵があったものだったが、今や造りを続ける蔵は減っている。日本酒の低迷と、地域文化やコミュニティの衰退は無関係だろうか」は同感である。
私の町にも酒蔵は何軒かありましたが、時の流れの中で姿を消し、もうその存在したことすら忘れ去られているのです。P10~P11に愛媛県内の酒蔵一覧表と県内マップが載せられていますが、もしもう数ヶ月早ければわが町の「嶋錦」酒造の酒蔵も載っていただろうにと思うと残念でなりません。双海町の中心地に白壁の酒蔵があります。嶋錦の酒蔵は町並みのシンボル的存在なのですが、今年からついに酒蔵の営業を止めたそうです。嶋錦は町きっての名家で町の歴史を誘導してきた功績は計り知れません。私のように酒蔵を惜しむ寂しさより、歴史を守り受け継いできたご当主の心痛はいかばかりかと、察するに余りあります。
昨日私の元へビール券が送られてきました。私がビール好きだったことを知っての贈り物なのですが、キリンのラガービールの券を見ながら、ビールをたらふく飲んだ昔が懐かしくなりました。煙会所の4畳半で朝までビールを飲み、空瓶で4畳半の周りを一周した豪快な飲みっぷりは今でも語り草だし、キリンビールのラベルの中のキリンというカタカナを探したりしたことが懐かしく思い出されました。
酒は飲まずとも酒の思い出は語れるし、酒の席で酒は飲まずとも飲んだような雰囲気で付き合いながら酒の話をしております。
「この冬は 寒くいい酒 出来た聞く この蔵既に 酒を造らず」
「蔵のある 白壁風景 街の顔 在りし姿と 写真に収め」
「酒蔵の 前を通ると 匂ってた 絞る酒の香 子ども心に」
「お土産に 貰った地酒 人が飲む お礼は私 割に合わぬわ」