〇大洲市田処のホタル祭り(その2)
ホタルは外が暗くなる午後7時30分頃にならないと見えないので、それまで体育館の中で食事をしたり展示物を見たりして雑談に耽りました。そのうち年輪塾のメンバーの清水さんがギター、青木さんがオカリナ、近藤さんがバイオリンを準備して演奏会が始まりました。地元の年輪熟生である西田和子先生も加わり、演奏に合わせて「このまちで」や「ふるさと」をみんなで熱唱しました。最後は西田和子先生の指導で金次郎の歌でしめました。清水さんも近藤さんもいつもながらの名演奏でしたが、特に青木さんのオカリナの上達ぶりには誰もが驚き、始めてからたった一年だというのに凄いと思いました。私の妻等はとても感動して、「私もオカリナを吹いてみたい」と言いました。「ホラぐらいなら吹けるが止めとけ」と大笑いをしたものです。
やがて薄暗くなったので運動場の隅に案内されホタルの鑑賞です。夜来の雨で増水した矢落川の瀬音聞きながら対岸を見る、と沢山の蛍が乱舞するようになりました。このホタルを見せたかった岸本本部長さんと松本秘書さんも身を乗り出すような姿でホタルに見入っていました。亀本さんたち地元の人たちも、大雨でホタルが流れたのではないかと心配していたようですが、沢山の蛍が飛んで大満足の様子でした。
この日はJRのホタルツアーも大雨のため中止になったと聞きました。小回りの聞く10数人の私たちのグループだったため中止もせず、不安ながらホタルを見学できたことはとてもラッキーでした。ホタルは僅か20日間ほどしか見れないため、土日しか空いていない人たちには梅雨の時期を考えると、見る機会はそんなに多くはありません。特に今回のような大雨の最中の見学会は送迎もままならず、ラッキーとしかいいようがないのです。
夜の帳が降りて辺りが暗くなると、蛍の光は一段と輝きを増します。手つくりの和紙と竹で作った行燈に火がともされ、足元を温かく照らしてくれている夜道を連れ立って、遠くに聞こえる太鼓の音を頼りに熊野神社まで夜神楽を見に出かけました。急な石段を登るとかがり火が焚かれた境内に到着しました。拝殿には見物に来た多くの人たちがいました。私たちも遠巻きに夜神楽を見学しました。
もう20年もこの地に足を踏み入れている私なので知り人も多く、かがり火の中で沢山の人から声をかけてもらいました。そのうち「日月の舞い」という演目のめくりが表示されました。昨年は飛び入り参加で目を回し大失態をしているので、今回は汚名返上とばかりに進んで拝殿に上がり、太鼓に合わせて日月それぞれのお盆を両手に持って舞いましたがやはり難しく、昨年より格段上達して目まいは少なく、まあまあ満足の行く舞いを披露することができ、大きな拍手喝采を浴び、お礼にお餅を沢山いただきました。
餅撒きの餅を拾ったりして時を過ごし、再び体育館まで戻り名残のホタルを見学した後、地元自慢の豆腐をお土産にいただき、元来た道を引き返して下灘コミュニティセンターまで帰って目出度く解散となりました。岸本本部長さんも松本秘書さんも大満足の様子で、別れ際握手した手から感動が伝わってくるようでした。
自然は寂しいが人の心が加わると温かくなるとは民俗学者宮本常一さんの言葉です。山里に一生懸命生きる人たちを応援することしか私にはできませんが、今年も岸本本部長さんや松本秘書さんをお連れして、その輪を広げたことは何よりも嬉しいことでした。やがて梅雨が明けると、海の向こうや山の彼方に入道雲が湧き暑い暑い夏がやって来ます。梅雨の最中のほんの短い束の間でしたが、ホタルと神楽が私の心に温かい何かを残してくれました。私たちを温かく迎えてくれた亀本さんや西田さん、それに地元の人たちに厚くお礼をいいます。ありがとう。
「雨上がり ホタル見学 夜神楽と 山里巡る 旅は楽しく」
「見たい人 見せたい人が 入り交じり 綺麗綺麗と 声を上げつつ」
「暗闇に ホタル乱舞の 桃源郷 住む人たちは 当たり前だと」
「夜神楽に 飛び入り参加 舞を舞う 拍手喝采 有頂天なる」