○役目を終わった運動靴
私たちは毎日、衣食住の暮らしを何気なく過ごしていますが、一つ一つに心を配ると大変な役割を果たしているものが沢山あることに気付きます。例えば靴ですが、私は概ね革靴、カジュアル布靴、運動靴、作業用長靴、作業用地下足袋の5種類を目的に合わせ使い分けているのです。病気で痩せたため高々56キロの体重ですが、靴はその全てを支えるため文句の一つも言わず毎日毎日働いているのですから、感謝しなければなりません。
貧乏な時代に育った私にとって靴は子どもの頃から貴重品でした。ゆえに破れない限り新しい靴を買ってもらうことはなく、殆ど一足の靴をまるで仇のように履いていたのです。しかし大人になって自分のお金で靴が買えるようになるとわがままになって、少し流行に遅れたり人が格好いい靴を履いていると自分も欲しくなり、また少し汚れが目立ち始めると、それまでのことを一切忘れて捨てたりしているのです。
昨日、この5年間慣れ親しんだ運動靴が破けてその役目を終わりました。1ヶ月前から靴底に違和感があり、ゴムの継ぎ手が開いていることに気がつきました。それでもボンドをつけて接着して履いていました。妻は「運動靴をボンドで修理して使うなんて聞いたことがない。あなたは余程貧乏性なのね」と笑われましたが、それでもこの1ヶ月間運動靴は悲鳴を上げながら私の体重を支え続けてくれたのです。
昨日はその運動靴を最後だからと履いて人間牧場へ行きました。あいにく地下足袋を忘れてしまったため、運動靴のままで作業をしました。昨日は草刈と梅の収穫で一日中急がしく働きました。午後5時を過ぎそろそろ帰ろうと足元を見ると、ゴムが大きく口を開いてまさに一巻の終わりのようでした。
妻に見せるとそのひょうきんな格好に思わず大笑い、まるでチャップリンの喜劇の様な格好となりました。
数日前から妻は私のために新品の運動靴を玄関先に用意してくれています。昨晩夕食を終えて散歩に行く時その靴を履いて出かけました。私は左足が外反母趾になっています。足の親指が内側に向いているのです。いつの頃からか分かりませんが、そのためどの靴も極力つま先が広いものを選んでいます。今回の新品の運動靴はまだ足に馴染まないため、多少違和感がるのです。そのうち靴が足に馴染んでくるものと思われますが、破れた靴のようにしっくり行かず歩くことが多少億劫です。
さて破れた靴は可愛そうですが昨日で使用停止となり次回のゴミ出しの日に廃棄する予定です。長年私のために働き続けた靴に感謝の気持ちを込めて「ありがとう」と言いました。
「不平など 一切言わず 五年間 歩き続けた 靴よさよなら」
「使い切る これも大事な 暮らし方 ケチではなくて 質素倹約」
「新しい 靴は違和感 そのうちに 馴れるだろうが 少し日なちが」
「さようなら 心のそこから ありがとう ゴミなる靴に 言葉をかける」