○ちょっとした騒動
昨日はお盆や終戦記念日、それに甲子園での高校野球なども重なって、何となく賑やかな一日でした。朝から小降りの雨が降っているにもかかわらず、私が造ったシーサイド公園のビーチには大勢の人が訪れて、わが町のお盆は田舎が田舎でなくなる日かもしれませn。私たちが子どもの頃お盆に泳ぐと河童に足を引っ張られるから泳ぐな」と言われたものですが、そんな伝説や迷信も何のそので、まるで裸ではないかと思われるような水着姿の若い女性が、ビーチでキャーキャー言いながら泳ぐ姿を見て、日本も変わったと思いました。
田舎ではお盆の帰省に合わせて色々な催しが行われます。そのひとつが同級会です。中学校時代の仲間が帰って来るのに合わせ、地元で暮らす物好きな人たちが幹事になって同級会を開くのです。公民館を借りた質素倹約型から、地元の料理屋さんを借りた普通型、松山に繰り出すちょっと豪華型まで、その様子は様々ですが、恩師を呼んで久しぶりに懐かし顔々が揃うのもお盆なのです。さすがに還暦を過ぎた私たちには、お盆の仏事や子どもの帰省などの世話があって同級会どころではないようですが、昭和47年生まれの長男も、昨日6時から近所の料亭で予定されている同級会に出かけて行きました。
孫に食事をさせたり風呂に入れたり寝かせたりと息子のいない分をカバーして一息ついた9時半ごろ息子は歩いて帰りました。私の血筋を受け継いでいないのか、息子は缶ビール一本が限度のような下戸なのです。それでも同級会とあって少し度を過ぎてお酒を飲んだらしくて、体中真っ赤になって、まあ赤尾にではないかと思うほどでした。帰ったころは酒の勢いもあってかなり饒舌に同級生の消息を私たちに話していましたが、そのうち暑いので裸になって居間のテレビの前横になってしまいました。顔は少し朦朧としていました。
やがて気分が悪いといってトイレへ駆け込み、ゲェーゲェーと吐き始めたのです。妻と息子嫁は洗面器やタオルを用意したり、背中を撫でたりと、時ならぬ騒動に付き合わされてちょっとした騒動となりました。飲んだものを吐いたせいかそのうち収まって、居間で寝てしまいました。二人は布団をかけて様子を見ていましたが、1メートル80センチもある大男を動かすこともできず、そのまま眠らせることにしたのです。
その姿を見ながら妻は、かつての新婚時代の私を見ているようだと述懐していました。実は私も余りお酒は得意な方ではありませんでした。でも酒は世渡りに必要とばかりに、漁師仲間や青年団仲間、それに役場仲間に誘われて飲み続け、お陰さまでアルコールなしでは生きていけないような雰囲気になていたのです。その過程では飲んでは吐き、吐いては飲むといった風に涙ぐましい努力をしました。特に新婚時代は妻にそのことで随分迷惑をかけたように思うのです。息子の穏やかな寝顔は私の昔と同じに写ったのかも知れません。
10年前から胆のう手術の後遺症で酒を止めているゆえに、余計昨晩のちょっとした騒動が印象的に思えました。私が酒を飲んで吐く姿を見て昔親父が、「酒は大いに飲め、飲んでも飲まれるな」と口癖のように言っていた言葉を反芻しながら、久しぶりに大人になった息子の寝息を聞きながらお横になりました。
午前2時までは確かに私たちの近くで横になっていた息子が、いつのまにかいなくなり、二階の家族の元へ去ったようでした。家族が恋しくなったのでしょう。お盆休みだし今朝はゆっくり寝かせてやろうと、妻は自分の朝寝坊の理由をつけて今もゆっくり休んでいます。
「そうだった 下呂吐く息子 横目見て 若かりし頃 思い出しつつ」
「酒は飲め 飲まれちゃならぬ 言っていた 親父の言葉 今頃なって」
「横たわる 息子の寝顔 しみじみと 同じ道のり 歩いているか」
「あの人が あんな人生 生きている 時の流れに 棹差しながら」