○送られてきた一冊の講演録
一昨日一冊の50ページほどの小さく薄っぺらい本が200冊、宅配便でわが家に届きました。届けた人が「ハンコを下さい」というので在宅だった妻が受け取り、「はて何だろう」と妻が開いて驚いたようです。中にはぎっしり本らしいものが詰め込まれていました。「地域と協力した青少年の健全育成」というタイトルで、人間牧場主(元双海町教育長)若松進一と表紙に書かれているのです。妻は急いで眼鏡を取りに行き玄関に座り込んで目次などを見たようでした。家に帰ると「お父さんあなたの本が届いている」と書斎まで運んできてくれました。
ポケットサイズのこの本は、日本赤十字社愛媛県支部と愛媛県青少年赤十字指導者協議会が昨年10月21日、双海町下灘小学校で開いた研修会の折私が講演した講演集なのです。わたしはこれまであちらこちらの集会で請われるまま講演を続けていますが、講演のテープ起こしをして講演集が出版されたことは何度かあるものの、こんな立派な装丁をしていただいたのは久しぶりなのです。私の場合講演はその場の雰囲気で話すことが多く、そんなに筋道を立てて話さない性分なので、少し面映ゆい感じがしながら、思い出をよみがえらせるつもりで一気に読んでしまいました。
目次
1、はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
2、下灘小学校の思い出・・・・・・・・・・・・6
3、青少年活動とのかかわり・・・・・・・・13
4、青少年を取り巻く社会の変化・・・・・18
5、青少年の健全育成・・・・・・・・・・・・・38
6、これからの青少年教育・・・・・・・・・・47
7、おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48
下灘小学校はわが母校です。2、下灘小学校の思い出という項目で私は三つ述べています。
原風景
こちらのほうには体育館ではない講堂があって、ここに木造の校舎がありました。そこから見ると、朝な夕な殆ど僅かですが、この校舎の窓から本当に瀬戸内海の穏やかな姿の中にきれいな夕日が落ちておりました。これは潜在能力の一番下の所にあるのかもしれませけれども、わずか七歳から十二歳までという学びの空間の中で、このいわゆる原風景というものが私の心の中にずっとあり、ひょっとしたら今までの町づくりでの夕日をテーマにした町づくりを起こしたきっかけになっているのではないかと思うのです。子どもにとって原風景というのは、大きな教育的な意味があるのです。そう思うと、私たちは今一度自分たちの周りを見渡して、自分の住んでいる所、暮らしている所の原風景の意味というのを、子どもたちに少し伝えていかなきゃいけないんだと思ったりもしています。
二宮金次郎の銅像
今の校舎の向こうに二宮金次郎の銅像がありました。
私はその二宮金次郎の銅像を見ながら、二宮金次郎は何の本を読んでいるのだろうといつも思っていました。ある日のこと、私はその二宮金次郎の上に上がって、何の本を読んでいるのだろうかと見ていたら、そこを通りかかった校長先生から「お前はそこへなんで上がっとるんや」と尋ねられました。-中略ー
武智信八州先生
この小学校の二階に図書室がありました。そこで私は小学校五年生のときに、一冊の本と巡る会ったのです。どんな本かというと「ジョン万次郎の生涯」という本であります。-後略ー
まあこんな具合にストーリーは進むのですが、7、おわりにではこう述べています。
こうして、色々なお話をさせていただきましたが、かけがえのない子どもたちの未来のために、私たち大人は何をするのか。それは教育の基本である「寄り掛かることを不必要とする」、そして「水から考え行動しようとするような生きる力」を作ってやる以外はないんだろうと思います。
そう考えると私は、二十一世紀を生き抜く子どもたちにこのJRC活動でそれらを培っていただければ、必ずや都会に行こうが何処に行こうが、ふるさとを忘れない一人の人間として、生きる意味を自分から作り上げていくのではないかと思っています。-後略-
文字は残る故、書き言葉ではないしゃべり言葉での編集には少々悔いが残りますが、まあ本筋は語っているのでひとまず安心しました。90分間でこんな話をしていたのかと、あらためて喋ることの難しさを痛感した一冊の本でした。
「送られし 講演集を 読みながら 恥ずかしいやら 面映ゆいやら」
「アクセント 方言語る 癖ありて 喋り言葉に 臨場感あり」
「妻いわく こんなおしゃべり しているの? そんなつもりも ないのに話す」
「ああ駄目だ まだまだ修業 足りないと さらなる飛躍 この本誓う」