○ムカデに刺される
私たち夫婦は仲がいいのか悪いのか測定器がないのでその度合いは測りかねますが、結婚してから今日まで40年近く一緒の布団に寝ています。一緒といっても子どもが小さいごろは三本川、四本川とその数を増し、多い時は六本川の字になって寝ていました。そのうち子どもたちが大きくなるに従って、一抜け、二抜けと抜けて行き、今は元の二本川の字で夫婦だけとなってしまいました。
友人たちに聞いたり、家庭学級などで講演の折手を挙げてもらって聞いたりするのですが、最近の人は夫婦であっても別々の布団に寝るのだそうで、ひどくもないひどい人は夫婦別々の部屋、もっとひどくもないひどい人は一階と二階に別れて寝ると聞いて、ひょっとして夫婦が同じ布団に寝る私たちが可笑しいのではないかと思ったほどです。
私の両親も同じ布団に寝ていたため、私たちはそれが当たり前だと思っていたのに、夫婦同床は少数派と聞いて私は考えました。私たち夫婦が可笑しいのではなく一緒に寝ない人が可笑しいのではないかと思うのです。人間は人生の三分の一を寝て過ごすといわれています。しかもその寝ている時間の殆どは夢を見たりはしますが殆どの時間は無意識に過ごすのです。ですから一緒に寝ても、隣に相手がいることを感じるのは僅かな時間なので、別に同じ床に入らなくてもいいと、夫婦別床派は科学的に分析していいますが、人間は化学で推し量れない何かがあるから面白いのです。
先日妻にその話しをしたら、「お父さん私たちも○○さんや××さんのように別々に寝てみる」と大笑いをしながらひょうきんな提案があり実践してみました。ところがどうでしょう。長年の馴れとは不思議なもので横に妻がいないと寝れないのです。妻も私と同じようだったそうで、一日だけで止めてしまいました。
酒を飲んでいた頃の私はいびきをかいて眠れなかった夜もありました。また子どもが夜泣きをして眠れない夜もありました。その思い出の一つ一つがわが家の、そして夫婦の思い出なのです。
前夜の朝方の出来事です。もうそろそろ起きようかと両手を布団の外の畳に伸ばした瞬間二回蚊に刺されたようなチクリとした違和感を覚えました。豆電球の下だし、まさかそれがムカデだとは思わなかったのでそのままにしていましたが、起きて手の甲と腕を見ると二ヶ所虫に刺されたような跡があり、少しかゆくなってきました。虫刺され用のウナクールを塗りましたが、少し腫れてきたので妻が「お父さん、ひょっとしたらムカデかも知れないので病院へ行ったらどう」というのです。朝のあいさつに行ったら親父も「それはムカデだからアロエをつけろ」と庭の隅にあるアロエの葉っぱを割いて塗ってくれました。
(ムカデに刺され大きく腫れ上がった左手)
(正常な私の右手)
昨日は妻の自転車が故障したため、トラックに積み込んで買った伊予市のお店に修理に出かけたり、締め切り原稿を送ったり、細々した身の回りの仕事で対外的なこともなかったので助かりましたが、夕方日が翳り始めて涼しくなった時間を見計らい、裏庭の草引きや畑の横の畦刈りをしました。それがいけなかったのか、今朝私の左手は別人の手と見紛うほどに大きく腫れて、妻は昨晩からタオルで湿布をしたりてんやわんやです。
もし夫婦別床だとこんな心配や湿布はしてくれなかっただろうと苦笑しました。痛む訳でもないし、これまでの経験だと2~3日すれば治るので病院には行かないつもりです。ふって湧いたムカデ騒動でしたが、その憎いムカデは果して何処へ消えたのか、謎は深まりどうやら犯人は特定できず迷宮入りで完全犯罪になりそうです。
「百の足 数えてみたが 百もなし 百足と書き ムカデ読むとは」
「刺した奴 今はどうして いるのやら 犯人見えず 完全犯罪」
「同床の 妻は時々 手を撫でて 痛さ分ちて 感謝感激」
「左手は まるで横綱 腫れ上がり 右手はまるで 御仏のよう」