○帽子の行方
私は若い頃から帽子が大好きです。帽子といっても人様のように値段が高くてお洒落な帽子ではなく、普通のありきたりの帽子なのですが、プライベートで外出する時は殆ど帽子を被って出かけるのです。そのため家には10個も帽子があって、廊下の隅に設えた帽子掛けの帽子を見て、どれを被ろうかと迷うのですが、お気に入りの帽子は二つか三つで、それ以外は殆ど被らずほこりを被っているようです。 そんなこともあって、デパートなどに行くと帽子売り場についつい足が向いて、買うでもないのに手にとって見たりしています。最近は帽子も随分安くなって千円前後で買えるものまであるようですが、帽子もそんなに必要でないためここ2~3年は買ったことがないようです。
酒を飲む頃はついつい忘れて、朝になって気付いても時既に遅しで、どれ程の帽子をなくしたことか分りません。そのため妻は帽子を買うとそのひさしにマジックで名前を書いてくれるのです。格好悪いから止めろと言っても止めるどころかこれみよがしに大きく書かれるため、何となく帽子を脱ぐのがおっくうになるのです。
年末、妻と二人で買い物に出かけたついでのレストランで食事が終り、帰ってから帽子を忘れた事に気がつきました。一日中あちらこちらに立ち寄ったため、何処に置き忘れたのかさえ思い出せない有様で、立ち寄り先を順番に思い出しながら記憶を辿りやっとレストランに行き着きました。たかが安い帽子ですから、そのレストランへ取りに行くのもバツが悪いと思いつつ、支払いの時にいただいたレシートの電話番号に電話をかけてみたのです。電話口に出た女性は丁寧に対応して、帽子の裏に「若松」と名前を書いているのを確認し、「預かっているので都合の良い時に」と約束してくれました。明くる日松山に所用で行くついでに立ち寄りましたが、先日とはまったく身なりの変わった背広にネクタイの出で立ちに目を細めつつ店員さんに帽子を貰いました。もし帽子に名前が書かれていなかったらこうはすんなりゆかなかっただろうと、妻の配慮に感謝したのです。
帽子は様々な特典を持っています。人間を格好よく見せるのも帽子です。頭が薄くなったり白髪になったりしても隠して若く見せますし、夏の暑い日などは炎天の直射日光を遮るばかりでなく、日焼けを防止します。また冬などは帽子を被ると暖かく、2~3度は保温をしてくれるようです。
私は人間牧場ができて以来野外での農作業をする機会が多くなりました。帽子を被るとヘルメットほどではないにしてもちょっとした怪我から頭を守ってくれるのです。梅林で作業する時も、草刈りする時も小さなすり傷や引っかき傷の絶え間がないのですが、帽子のお陰で題字に至らなかったことは四六時中です。これからも愛用の防止を被ってダンディに、それでいてしっかりと防備防寒、日除けをしたいと思っています。
「名前書く 妻のお陰で 失くしたる 帽子見つかり 受け取りに行く」
「ひい・ふう・みい 数えてみれば 数々の 帽子廊下に ひっそり吊られ」
「公園で 拾った帽子 洗濯し 未だに使う したたか帽子」
「気に入った 帽子を被り 七三に 構えてみたが 余り変わらず」