shin-1さんの日記

投稿者: | 2007年8月17日

○今日はとても嬉しい日になりました

 12年も前のことでしょうか。ある日電話で友人から金の無心がありました。金の無心はその友人ではなく友人も私もよく知っている女性に無心をして欲しいとのことでした。聞くところによると親の反対した人と出会いの末身ごもり、子どもを産むための費用だそうです。勘当された親にも頼めず途方に暮れた末の切羽詰った話に同情し、何人かでお金を工面して遠い異郷の地で無事出産の知らせを友人から聞いた時はわがことの様に嬉しかったものです。その後様々な遍歴を経る度に手紙や葉書で近況連絡する律儀さは見上げたものだと思いつつ、貸した金のことなどすっかり忘れていました。

 今日外出から帰ってみると妻が「お父さん女性の方から現金書留が来とる」というのです。表書きの下には昔の名前が記されていました。封を切り中を開けてみると貸した現金がきちんと入っていて、手紙にはこれまでのいきさつや近況が詳しく記されていました。

 妻は女性ですからもてない私でも女性に金を貸ということは余程の理由だと、当時の事をちゃんと覚えていました。私は急ぐというので当時の収入役に嘘をついて2日後の給料日まで借用書を入れてお金を借りたのです。当然2日後の給料日には私の給料から天引きされました。薄っぺらい給料袋の時代ですから、手渡した妻は理由を聞きました。私は「お前にもいえない理由で金を貸した」とだけいいました。妻は何にもいわず納得したのかしないのか一応了解しました。

 あの日以来10数年の時が流れました。年に1、2度の年賀状や暑中見舞いも沢山の葉書に隠れてお金を貸したことなどすっかり忘れていたのです。相手には失礼な話ですが「訳ありのお金だから戻ってくるかどうかも分らないし、借用書など書かない信用貸ですから戻ってこなくてもいい」くらいに思っていました。

 処がどうでしょう。ちゃんと戻って来たのです。私は涙が出るほど嬉しくなりました。察するに彼女は元の鞘に納まって実家へ帰り働きの中からコツコツと貯えて今日の日を迎えたに違いありません。小学生の長女と次女をかかえて暮しも大変でしょうが、恩を恩として返したのです。勿論妻に彼女からの手紙を読んでやり、当時の給料袋の思い出を二人で振り返りました。妻も涙ぐんでいる様子で喜んでくれました。そしてそのお金は妻の家計簿に戻したのです。

 世の中色々なことがあります。余程裕福に見えるのか私の元にさえ金の無心に来る人もいます。中には貸したっきりで返さない人もいます。人には人に言えないことだっていっぱいあるし、特に金に困った時の難儀さは本人でないと分らないものです。わが家の先祖も貧乏、私も未だに貧乏ですが、親父が口癖のようによくいう「騙されても騙すな」はお金の世界でも通用するものだと思うのです。

 今日は妻が「お父さん、今日はいい日でしたね」と言ってくれました。そうです。今日はハッピーなのです。

  「十二年 ぶりに返った 貸した金 手紙読みつつ 目頭熱く」

  「一枚の 借用書もない 貸した金 さぞや心に 重き荷となり」

  「俺の妻 あの時何も 言わず首 横に振らずに よくぞ了解」

  「嬉しいね 今日はいい日だ 思い出す 昔のままの 彼女の笑顔」  

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