人間牧場

〇それなりとそれ以上

 私には四人の子どもがいます。それぞれそれなりに成長して、それなりの人生を歩んでいますが、この歳になって思うのは長男の存在です。長男は工業高校を卒業後大大阪の建築専門学校を出て、建築設計関係の仕事を松山へ毎日通ってしています。結婚後暫くは松山のマンションに住んでいましたが、子どもが保育園に入るのを機に帰郷し、念願の同居を始めました。長男夫婦が家を継いでくれることは私の念願だったので、孫たちと一緒に住める喜びを味わいながら、日々を楽しく暮らしています。取り立てて優秀でもなく、私と妻を足して2で割ったくらいな極平凡な、それなりの息子ですが、優しさは抜群で亡くなった親父にもそれなりに優しく接してくれました。

水平線の家で洗いものをする息子
水平線の家で洗いものをする息子

 年老いて一番の安心は同居して家を継いでくれる息子がいるということで、跡継ぎがいない隣近所の人から羨ましがられていますが、この点だけはそれ以上の嬉しさです。さて息子はやはりカエルの子はカエルで、若い頃から社会活動をしている私に似て、色々な社会活動に積極的に参加して、毎日楽しくやっているようです。特に伊予市中心市街地のまちづくりに関心を示していて、仕事の合間を縫って朝早く掃除に出かけたり、映画会や100円市に関わっていることを風の噂に聞いています。親子は同じような社会活動をしないのが普通ですが、それなり以上に興味を持っています。

 息子と気が合いながらも、反目するのはやはり人間牧場の存在です。人間牧場を造る時、諸施設の設計を息子にやってもらいました。勿論オーナーは私なので資金は私が出しましたが、随所に息子らしい私以上のアイディアを出してくれたし、今も日々の運営や今後のあり方について議論と衝突を繰り返しているのです。いずれは人間牧場は息子に譲る予定なので、それもまたありと思っていますが、ここにきて10年の時の流れで老朽化し始めた施設の補修に、少し金がいることを巡ってバトルを繰り返しています。それでも息子は昨日のような人間牧場を使ったイベントにも積極的に参加し、陰ながら手伝ってくれていて、有難いことだと口では言いませんが感謝しています。
 それなりにしか育てることができなかった息子ですが、それ以上の働きをしてくれていると思わないと罰が当たりそうです。親と子は反感反目しながら、時には共感・共鳴・共有して生きて行くもののようです。

  「それなりの 息子と同居 それなりに 楽しく暮らし 過不足もなし」

  「いつの間に おんなじ道を 歩んでる 親子はやはり 似ているようだ」

  「それ以上 求めはしない 思いつつ いつの間にやら お互い求め」

  「ああこれが 人生というもの なのかしら 親子の反感 反目もあり」

 

[ この記事をシェアする ]