○月に一度の男前
私は物心ついてから高校を卒業するまで、頭は丸刈りで通しました。時代背景がそうだったからかも知れませんが、子どもは丸刈りというのは当たり前だったので、何の疑いもなく丸刈りにしていました。頭の髪を伸ばそうと思ったのは高校を卒業した時で、当時は石原裕次郎などに憧れたこともあって、若者の殆どが短めの角刈り風だったようです。私はそれ以来髪を伸ばしたといっても短めの角刈り風を貫き通してきました。妻は少し伸ばしたらと勧めてくれたこともありましたが、結局は角刈り風の頭が自分には似合うと思い込んでいたのです。
髪が長いと髪が伸びても余り感じませんが、実は髪が短いと必ず毎月一回散髪に行かなければなりません。私の場合も多少の早い遅いはあっても毎月一回のペースで決まった散髪屋さんに行くのです。ところが先月はお盆が入り、散髪に行けば散髪屋さんが休みだったり、月曜日の定休日だったり、また私の日程が空かなかったりしてその結果、ついに1ヵ月半も延び延びになってしまったのです。
「散髪に行く」といったら妻が「まだ早い」と口癖のようにいうのに今回に限っては、「髪が少し伸びたようなので、出張の前なので散髪に行ったら」と勧めてくれるほどでした。
先日久しぶりに散髪屋へ行ったら、「進ちゃん、何処か具合でも悪かったの?」と聞かれました。「いやあ散髪に来たら休みだったり、ついつい忙しくて時機を逸してしまいました」と大笑いです。早速三つある席の真ん中に座り散髪屋の大将にバリカンで裾を刈り上げてもらい、その後はハサミ刈りをしてもらいました。顔剃りは主に奥さんの役目で二人がかりで私の男前をあげてもらいました。歳を取ると髪の伸びるのが遅くなるのか、刈り取られ床に落ちた髪は幾分少ないようにも感じられましたが、それでも僅か1時間で頭をすっきり整え、3400円を払って散髪屋を出ました。
帰るなり妻が「何処を散髪したの?」と、相変わらずの減らず口です。「男前になっただろうが、ほらあぜ道カットだ」と、バリカンで刈った襟元を手で触らせてやりました。「まあ、タワシみたい」とはこれまた面白い表現でした。これでこれから1ヶ月は顔のヒゲさえ剃れば何の問題もなく身だしなみが整うのです。
私は毎日風呂に入り、毎日髪を洗います。若い頃は髪を洗った湯上りにヘアーリキッドを振りかけていましたが、今は何もつけません。ドライヤーもかけずただ洗うだけで十分ですからこれくらい便利な頭はないのです。
この歳になると頭は白髪か禿か二通りありますが、私は「若松さん頭は染めているのですか」と時々聞かれますが、頭を染めたことはまだ一度もありません。でもお陰様でまだ黒い部分が多いのですが、やはり近頃になって少しずつ白髪が目立つようになってきました。「顔は悪いがメガネはかけたことがなく髪も黒々」などと自慢めいた会話をしていますが、白髪になればなったで、これは自然の成り行きだと思って意の向くままに生きて行きたいと思っています。
久しぶりに散髪した私の顔でなく頭を見に双海町の人間牧場へ遊びにお越し下さい。
「まだ早い いつも口癖 いう妻が 散髪したら なるほど伸びた」
「散髪屋 鏡に映る 自分見て あらあら不思議 男前なる」
「風呂に入り 毎日洗う 手軽さよ 角刈り頭 何と便利だ」
「染めたのか 見まがう程に 黒々と 白髪や禿と 呼ばれぬ私」