人間牧場

〇懐かしい人に出会いました。

 出前授業と講演会を頼まれて訪問していた西予市立中川小学校の校長室で、昔瀬戸町へ派遣社会教育主事として赴任していたという教頭先生とお話をしてると、校長室の戸を「コンコン」と叩く音がして、お年寄りの女性が一人「若松先生にお会いしたいのですがよろしいでしょうか?」と入って来られました。「私は先生ではない若松ですが?」と立ち上がると、その女性はいきなり「若松さん、私の顔を覚えていますか?」と言うのです。私は毎日不特定多数の人を対象にお話をしているので、とっさに言われても「はて?」と傷みかけた記憶装置をフル回転させながら、「宇和町・・・、女性・・・・」と記憶を辿り、「上甲さんじゃありませんか?」と答えると、「覚えてもらっていて嬉しい!!、私は上甲八重子です。その節はお世話になりました」と笑顔で近づき握手をして再会を喜びました。

久しぶりに出会った上甲さんと末光さん
久しぶりに出会った上甲さんと末光さん

 私の記憶が正しければ、上甲さんは元学校の教員で、退職後宇和町の初代連合婦人会長になったり、その後教育委員会で婦人担当の社会教育指導員をしていました。当時の旧宇和町は県内きっての社会教育先進地として注目を集めていました。ゆえに社会教育の仕事をししていた私は、度々宇和町を訪れ、関係者と深い交流をしていました。上甲さんもそのお一人で、講演に招かれたりしながら交友を深めたものでした。聞けば年齢は95歳で独居だそうですが、なおかくしゃくとして、耳も目も歩く姿もしゃんとしていました。私が加齢しつつあるように、私の知人友人だった社会教育関係者も私の視界から消えつつありますが、こうして元気で暮らしている人に出会うと、こちらが激励されているようで、しっかり生きねばと思った次第です。

 講演会にはこれまた懐かしい、かつての公民館長末光安雄さんも見えられ、私の話を熱心に聞いてくれました。私にとっては歳がふた回り違う上甲のおばあちゃんも、ひと回り違う末光のおじいちゃんも、自分と同じスピードで歳をとってきたので、当時にタイムスリップしたような感じがして懐かしく思いました。
 私はこれまでの人生においてどれほどの人に出会い、どれほどの導きを受けてきたことでしょう。「人は人によりて人となる」のだとしたら、上甲さんも末光さんもいわば私の恩人なのです。「これからも元気でお過ごし下さい」と握手を交わし、少し涙ぐんでお別れしました。

  「覚えてる? いきなり私に 問いかける 95歳の 昔の知人」

  「動き出す 古い体内 記憶機が 20年ぶり 見事ピンポ~ン」

  「懐かしき 日々の思い出 蘇る あの頃お互い 燃えていました」

  「元気でと 言葉を交わし 分かれたが 少し涙が 感動人間」

[ この記事をシェアする ]