〇人間牧場の秋を演出する花二題(ツワブキとススキ)
私の住んでいる双海町は瀬戸内海に面していて、瀬戸内海気候といわれる比較的穏やかな気候に恵まれています。比較的穏やかと表現したのは、瀬戸内海の中でも西の方の外洋性の高い伊予灘に面しているため、多島美に囲まれた穏やかな燧灘、黒潮が流れ込む暖かい宇和海に比べ、北西向きで水温が低く、関門海峡を吹きぬける風浪がまともに当る地域で、特に冬場の北西の季節風は高い突堤を揺り動かすように、何日も何日も吹くのです。それでも春から夏の季節風は南寄り、秋は北東寄りの風が吹くので、その時期は瀬戸内海らしい気候を体感できるのです。
北東寄りの風が北西に変わるこの時期、双海町の海岸は黄色いツワブキと真っ白いノジギクがいたる所に咲いて、馥郁とした香りが漂い、桜やツツジといった人の手で植えられ咲く花々と違い、野の花だけに派手さこそありませんが、一年中で一番穏やかな季節なのです。
私はこの季節が大好きで、特にツワブキは草刈りの時に残しておけば、次第に株が大きくなって、無数の花を咲かせるのです。また土壌のいい場所に移植して植え除草をすると、3年くらいでちょっとした花壇のようになるのです。葉っぱは常緑だし、春には綿帽子を被った春子が顔を出し、それを採集して皮を剥いで一度茹ではえ水で晒して灰汁を取り、メバル等の魚の煮汁で炊くと、これはもう味の良い絶品に仕上がって、酒の肴になるのです。
2年前に千本桜の森づくり事業を思いついた時、人間牧場へその標準木として枝垂桜を植えた折、石垣工事で移転移植したツワブキが活着して元気に育ち、今年の秋は見事な花を咲かせているのです。
これ以外にも人間牧場のいたる所にツワブキの花は今が盛りと咲いていますが、花に心を動かせる歳になったのかと、納得しながら、「ああ綺麗だ」と一人花を愛でながら、深まり行く秋を楽しんでいるのです。
ふと目をやるとススキも今が盛りのようです。このススキは人間牧場を造るため開墾した折、沢山の株の中からこの株だけ残しておいたものです。これまで人間牧場の季節の演出には欠かせないものとして、春の芽立ち、夏の深緑の爽やかな姿、目隠しとしての効用を存分に発揮してくれました。
昨日はその周辺のシャシャキを思い切って伐採したため、斜面に生えたススキの大きな株が目立つようになってきましたが、これだけでまるで大型の花瓶に活けたようなダイナミックさです。人間牧場のススキは少し晩生なのか穂が熟れるのはまだ先のようですが、このススキも春先に一度刈り取り作業を行うなど、これからも大切にしたいと思っています。
「今年も 静かに秋が 深まりて ツワブキ・ススキ 今が盛りと」
「花愛でる 歳になったと 納得し 右に左に 場所変え眺む」
「瀬戸内の 眺望目やる 人多し ツワブキ・ススキ 見るは少なし」
「指折りを 数えてみれば この風情 何度楽しむ ことができるか?」