人間牧場

〇世界遺産白川郷合掌造り集落(その3)

 岩本さんの案内で白川村役場を訪ねました。平成の合併話はあったものの、近隣市町村と合併もせず単独で残ることを決断した白川村は人口が1790人程度、平成23年度の予算規模が一般会計で26億80千円、スキー場、温泉開発、公共下水道、簡易水道等の特別会計を有したごくありふれた村ですが、「とりあえず村長室へどうぞ」と案内されて岩本さんから白川村のあらましについて説明を受けました。その説明の中で際立っていたのは観光客の入込み数です。ピーク時の平成20年には1861千人を記録し、東日本大震災の影響を多少受けたというものの、それでも22年度には1590千人と、交流人口の多さに目を見張るのです。宿泊客は年間91千人とこの数字を見た限りでは、観光立村の村であることが良く分かるのです。また最近は台湾等外国からの観光客も10万人を越えていて、まさに世界遺産白川郷という冠の強さを見せ付けているようでした。

 そのうち村長さんが姿を見せ、相次いで村議会議長さんも加わって色々なお話を聞かせてもらいましたが、小さな村にありがちな暗さは微塵もなく、むしろ堂々と歩んでいるような自信を感じさせました。さて世界遺産白川郷合掌造り集落の概要ですが、国の伝統的建造物群保存地区選定が昭和51年9月、ユネスコ世界文化遺産登録が平成7年12月だそうで、この2枚看板の恩恵を受けている荻町地区には合掌建造物が114棟あるようです。1965年頃村内の小集落の集団離村を始めとして合掌家屋の減少が著しく、地域住民の保存意識や機運が高まり、1971年に荻町集落の自然環境を守る会が発足し、合掌家屋を売らない、貸さない、壊さないの三原則の住民憲章を策定し保存運動を推進して今日に至っています。建物や土地の現状を変更する際は、事前に守る会の許可が必要とされていますが、最近は駐車場問題で多少ゴタゴタしていることがマスコミで報道されているようです。
 世界遺産に登録されるには、定められた6つの登録基準のうち1つ以上を満たすことが必要ですが、白川郷荻町の場合は合掌造り家屋の民家建築としての建築的価値が認められ、それがまとまって残り、かつての農村景観を保存しているという集落的価値が登録基準を満たしているのです。

 合掌造りとは、木材を梁の上に手の平を合わせたように山形に組み合わせて建築された、勾配の急な茅葺きの屋根を特徴とする住居で、又首構造の切妻屋根とした茅葺家屋をいいます。屋根の両端が三角形になっているのが特徴で、積雪が多く雪質が重いという白川の自然条件に適合した構造に造られています。日本の一般的な家庭と違うところは、屋内を2~3層に分け屋根裏を積極的に作業場として利用しているところです。幕末から昭和初期にかけて白川村では養蚕業が村の人々を支える基盤産業でした。切妻屋根の建物は南北に面して立てられており、これは白川の風向きを考慮して風の抵抗を最小限にするとともに、屋根に当たる日照量を調節して夏涼しく冬は保温されるようになっています。妻の開口部で風と光を取り込むことで蚕の飼育に適した環境を作り出す生活や生産の機能が家の形となっているところに、合掌造りの美しさを感じることができるのです。
 合掌造り保存には多大な労力と資金が必要ですが、合掌屋根の葺き替えや修理は国・県の補助制度が確立されていて、屋根吹き替えは地区住民の労力提供による共同作業結で行なわれるところが大きく、こうした住民の助け合いの精神が世界遺産登録の際に大きく評価されたようです。

 

  「役場にて 話聞く度 合掌の 集落保存 苦労偲ばれ」

  「好き嫌い 損得よりも 善か悪 世界遺産は 善の塊」

  「結という 助け合いにて 残された 遺産これから 先もしっかり」

  「平準化 された文化の その中で 異彩を放つ 合掌造り」

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