○メンタルヘルス①
最近私のところへ何故か、人生相談ともとれる悩みを持った人が訪ねて来ることが多くなってきました。私はその手の専門家ではないので一応断るのですが、それでも人間牧場へ行ってみたいと懇願しやって来るのです。
これまでにも役場に勤めていたこともあって、悩み事の相談には乗っていましたが、ヘタをすると素人の助言は逆効果になるだけに余り深入りはできないのです。「何で私の相談?」と振り返ってみると、どうやら私の呼び名の前に「人間牧場主」という、勝手に自分で名乗っているだけの肩書きがあるからなのかも知れません。
昨日もある夫婦が人間牧場へ一組ずつ二組、それぞれが時間をずらしてやって来ました。一組目は知人を通じてある奥さんからご主人のことについて相談を受けていましたが、やって来たご主人がつい最近うつ病にかかり、公務員でありながら休職中とのこと、もう一組は息子さんが度重なる就職活動にもかかわらず全て上手く行かず、就職浪人中で家の中がいらだつ息子さんとの対立で険悪になっているという話でした。
昨日は親父を病院に連れて、間もなく入院手術する麻酔について医師の説明を受けに、午前中病院へ行っていたので昼食を取る間もなく、最初の訪問者と午後2時に下灘コミュニティセンター前で待ち合わせて、人間牧場へ出かけました。
ご主人は一見どこも悪くはない普通の人に見えますが、昨日の人間牧場からの眺めは時折雨のぱらつくあいにくの天気で海も空も少し淀んで見えました。「まるで主人や私の今の心境のようだ」と奥さんは評されましたが、ご主人は眼下に見下ろす瀬戸内海の海や空を見て心が晴れたのか、「いやあいい所です。久しぶりに心の曇りが取れました」と言って色々な話をし始めました。私はただ聞いて頷いたり同調したりしながら、心に刺さった棘の原因を探しました。専門の医者から「うつ病」と診断されて薬も処方されているようなので、むしろご主人を取り巻いて日々暮らしている奥さんの話に耳を傾けました。
奥さんの話では職場の人間関係や仕事のことが原因のようなので、ご主人が黙して余り語りがらないため原因を飲み込めておらず、出世の遅れや世間体を気にしているように聞こえました。ご主人の病気もさることながら、むしろ奥さんの気の焦りがご主人を追い込んでいるようなのです。「出世」と「世間体」、これは大きな問題なのです。幸い私は自由人になって「出世」や「世間体」とまったく無縁なだけに、「出世」と「世間体」の呪縛を取り払う術を知っているのです。いわば開き直りでもう「出世」や「世間体」という世界から足を洗うことなのです。
ご主人のような真面目に人生を考えるタイプは心の病気になる確率が高く、奥さんのプライドがそれに拍車をかけていることをお話し、少し外に出て太陽の下で汗をかくことを勧めました。自分が病気だと思い込み窓と壁で仕切られた狭い部屋の中でのみ過ごしていると、私だって病気になるような気がするのです。
「数日後にまた来たい」「出来たら農作業を手伝わせて欲しい」と言い残して帰って行きました。私のそんなに暇ではありませんが、乗りかかった船です。何とか元気になって欲しいと思い、再会を約束しました。
「うつ病に なったご主人 妻が連れ 人間牧場 私訪ねて」
「出世とか 世間体など 気にしてる 奥さん原因 心の病」
「牧場の 眼下眺望 深呼吸 これが一番 病気の薬」
「変なこと 言へば病気が 重くなる 素人ゆえに 手出しはしない」