○占拠せられたテレビ
「よくも毎日行く所があるわねえ」と妻が感心するほど最近は出歩くことが多く、滅多に家にいないため、朝の新聞以外はテレビのニュースなども見る機会が少なく、僅かに車の移動時間にカーラジオでニュースを聞く程度なのです。そのため「昨日テレビで見たけど、あんた知っている」などといわれるともうお手上げの状態なのです。そのためでしょうか、家にいる時のテレビのチャンネル権はいつの間にか完全に妻に移行してしまっているのです。私が「こんな番組を見たい」と言い出そうものなら、「二階のテレビで見てよ」と冷たくあしらわれ、ついにはすごすごと書斎に入ってパソコンを打つのです。こうなったら妻と夫の関係は冷めた味噌汁のようで、温め直しても余り美味しくないのです。
妻は最近サスペンス番組が大好きです。特に右京さんと亀山さんが登場する「相棒」は欠かさず見るし、DVDにダビングして、よく飽きないなあと思うほど何度でも繰り返し見ているのですから、その気持ちが私には分らないのです。
息子と相談してビデオを買った頃ビデオの録画はテープでした。安売りのようなビデオテープを何本も買ってダビングしていたため、テレビの横の書棚には無数のビデオテープが並んでいました。しかしこれは故障が多く、画質も悪いことから、2年前に新しいDVD用のビデオを買ったのです。最初は操作が面倒なため息子に教えてもらっていましたが、そのうち慣れて今ではリモコンを使って予約入力するなど相当な進化をしているのです。
妻は読書家で暇さえあれば小説を読んでいました。しかし最近は老眼になったことや、仕事に加え孫の世話、親父の世話など、余りにも仕事が多いため気の休まる時間がなく、そのはけ口としてテレビを見ているようなのです。まあ妻の唯一の趣味として認めてやらねばなるまいと思ったりしますが、それでも時々はまるで子どものようにチャンネル争いをするのです。
最近は時々やって来る孫のためにマンガや自然、動物といった孫が興味を示しそうな番組の録画もしていて、その番組が元で孫と妻は映画鑑賞にも出かけているようです。
私は余りテレビを見ない方です。間もなく北京オリンピックが始まりますが、日本と中国北京の時差がそんなにないことから、前回のように妻が夜更ししてテレビを見ることもないようです。
さてこのテレビ、購入してもう十年が過ぎようとしていますが調子がよく、このままだとデジタル放送が始まるまでは使えるかも知れないと思っています。松山に住む二人の息子の家では既にデジタル放送が入っていて、行く度にわが家のテレビのみすぼらしさを感じています。まあ古いものは新しくなる訳ですから、今に息子たちが売る疚しがるようなテレビを買いたいと、今から目的貯金を始めています。
「チャンネルを 奪われ俺の 地位いずこ 濡れた落ち葉か テレビも見えず」
「DVD いとも簡単 操作する 俺より上だ テレビに限って」
「この画面 何度見たやら 飽きもせず 妻は必死に 相棒見てる」
「二の次は 私でなくて 孫らしい 落ちたものだな 亭主の地位も」