○春が来た
人間牧場にも遅い春が来て、青い青い柔らかい草が地面を覆い始め草丈も随分伸びてきました。「ああ今年もこの雑草と戦わなければならないのか」と思うと少しガッカリしますが、近所のおばちゃんが「草は七草というように7回刈らなきゃ草には勝てない」と言われてハッとしました。「そうか一年に7回も刈らなければならなければならないのか」と思えばそれは大変なのですが、「7回刈れば雑草に打ち勝つのか」と思えば俄然勇気が出てきました。今年の冬は体調不良(ギックリ腰)と超多忙で作付けを予定していたジャガイモを断念することになって、悶々の春なのですが、急峻で細長い畑には思い切って梅とスモモを植えることにしました。このことは24日のブログ「忙しい一日」で紹介しましたので省略します。
春といえば何といっても山菜です。この季節になると海沿いに面した私の町ではツワブキが沢山獲れます。山や畑の脇の急斜面には綿毛を被ったツワブキの子どもがニョキニョキ顔を出しています。私も苗木を植えた後そこら辺を歩いてあっという間に一抱えもツワブキを収穫しました。丸々と太ったツワブキはいかにも美味しそうなのですがツワブキを食べるには皮を剥我なければならない難題があるのです。
ツワブキは灰汁の強い植物なので皮を剥ぐとその灰汁が指先にまるでニコチンのようについて取れなくなるのです。近所の歯医者に勤めている妻は、手を使う仕事なので余り灰汁をつけると見苦しいので、獲ってきたツワブキの皮を剥ぐのはもっぱら私の仕事になるのです。そのことを承知しているのでツワブキを獲る時いつもためらいますが、美味しい味には勝てずついつい獲ってくるのです。一昨日夜の地元の会合が予想以上に早く終わったので、テレビを見ながらツワブキの皮を剥ぎました。「まあ珍しい、お父さんがツワブキの皮を剥くなんて。雨でも降るんじゃあないかしら」と、妻も次男も鼻で笑って手伝おうとはしないのです。しかし妻の予言はよく当たるものでその明くる日、つまり土曜日は大雨で馴れないことはしない方がよいと思いました。
昨晩の食卓には私の剥いたツワブキがメバルと一緒に煮付けられ逸品添えられました。今時はメバルも旬でメバルの味の染み込んだツワブキのほろ苦さはやはり早春の味でした。
最近は私と同じようにツワブキを食べたいという人が多いのでしょうか、シーサイド公園の特産品センターではツワブキの剥いたのをビニール袋に入れて売っているようです。少しの量でも200円の値札が付いています。さしずめ私の加工したツワブキは少なく見積もっても2千円はくだらないと、妻はくだらない褒め方をして持ち上げてくれましたが、忙しさの余り、旬を食べる、旬を実感することの少なかった私の人生も、これからはせいぜい旬でありたいと思っています。
待ちに待った桜の開花宣言が松山でも出されました。いよいよ春本番です。人間牧場へも春を探しにちょくちょく顔を出したいものです。
「手袋を はめてツワブキ 皮を剥く 汚れたとても 困りもせぬに」
「剥きしツワ 二千円也 値踏みする 妻の一言 勇気百倍」
「こんなもの 美味いと思う 年頃に なった自分に 気付くツワブキ」
「妻言うた 予言どおりに 雨が降る 気象予報士 顔負けですな」